――あなたの場合、日常的に聴く音楽の中には、英語圏のものや中国語圏のもの、もしくは日本のものなど、様々な音楽があると思います。それが頭の中で並列になっている?

そうね。特にそれを意識したりはしていないんだと思う。音楽作るときには出てきたものをそのまま自然に形にしていくから分析したりはしないけれど、作り終わったあとに分析したら、確かに国によって音階や楽器の使い方が違うから、「これは日本っぽいな」とか「これはフレンチっぽいな」と思うことはあるという感じかな。

――ちなみに、最近の中国のオルタナティヴなポップ・ミュージックの中でかっこいいものがあれば教えてもらえると嬉しいです。

中国でのオルタナティヴ・ミュージックはつねにアンダーグラウンドだから、私自身もそれを見つけるのは難しい。でも見つけるのが難しいだけで、確実に存在しているのは間違いない。

――中国にツアーをしに行った日本のアーティストから、それと同じ話を聞くことがあるんですよ。かっこいいアーティストを見つけても、なかなかそれを紹介するのは難しい、と。

そうだよね。プロモーションや宣伝にかける手間暇はメインストリームに焦点が当てられているから、みんな自ら探していくというプロセスを忘れている部分もあるんだと思う。

――自分で音楽を作る際にも、そうしたオルタナティヴな要素も作品に入れていきたいと思いますか? それとも、自分はよりポップな音楽を作りたいと思う?

まぁ、私自身はポップ・ミュージックが好きな人間だし、自分が育ってきた環境を考えると、私の中には両親から受け継いだポップ・センスが血筋として流れていると思う。だから、オルタナティヴな音楽にも影響を受けたけれど、私が作る音楽は、ポップの要素が大きく反映されたものになっているんじゃないかな。

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――今回のアルバムを作っていった際に、印象に残っているエピソードや曲があれば教えてください。

たとえば“エクスプロージョンズ”は、一日で出来たとまでは言わないけれど、すごく短時間で出来た曲。ジ・インヴィジブルメンの2人と最初に仕事をした曲なんだけど、会ってすぐに「仕事を始めよう」という感じでトラック作りに入った。そのときに、インヴィジブルメンのジョージが「これは実験的な曲だからチャートのトップを飾ることはないかもしれない。でもなぜか妙にキャッチーだよね」と言っていたんだけど、実際にアルバムが出てみたら、意外に多くの人が「この曲が好き」と言ってくれたのはすごく面白かった。

――この曲はアレンジがユニークなものになっていますよね。

そうそう! 特にストリングスの部分はクールだよね。

――他にアレンジ面で工夫した曲を挙げるなら?

やっぱり“ドリームス(夢中人)”は楽しかった。最終形はすごく満足のいくものになったと思う。この曲は日本でも大ヒットしたということをレコード・レーベルから聞いていて、母が既に中国語でカヴァーをしていたから、まったく同じことをしてもしょうがないと思って。「どうせならまったく違うものに変えてしまおう」と思ってアレンジを考えていったのよ。原型からかけ離れたものにすることによって、自分らしさも出せると思ったしね。

――すごく音数が少なくてシンセの音も実験的ですし、ベースラインもすごくダビーで面白いです。

この曲は、作っていくなかでどんどんアレンジが変わっていったのを覚えている。ベースのレコーディングをしたときは、エフェクトをかけずにロウなサウンドを使った。

――シークレット・トラックとして“ブルー・フラミンゴ”を入れた理由は?

それは簡単で、既にリリースされた曲ではあるけれど、アルバムの中にも入れたいと思っていたからね。そのときマネージャーが「シークレット・トラックにすれば?」と言ってくれて、「ああ、OK」って感じで、めちゃくちゃ単純な理由だった(笑)。逆に作っていく中で大変だったのは、“ウェイティング・オン・グレゴリー”。この曲は歌詞の内容をどうするか決めかねていて、スタジオから家に帰ってからも歌詞のフック部分が出来なくて。そこからふたたびスタジオに向かったときに、アルバムのコ・プロデューサーの人がすごい剣幕で怒っていたから「どうしたの?」と聞いたら、「またグレゴリーがドタキャンした」と言っていてね。そのグレゴリーの写真を見せてもらったら、割とイケメンの男の人だったから、「じゃあグレゴリーについて書こう」と思って、彼待ちの状態を歌にしてみた(笑)。

――とはいえ作品全体を見ると、歌詞のテーマとしては、あなたが学校をドロップアウトしてからミュージシャンとして独り立ちしていくまでの時期のことが描かれていますね。

そう。これは私があるひとつのコミュニティから、別のコミュニティに移動する際のドキュメントになっているんだと思う。その中で身体的にも内面的にも変化をしたことを描いている。

――その期間の中で、特に自分のどんなところが変わったと思いますか?

社会に独り立ちしていく際って、色んな期待や希望を抱いていて、最初は自分の色眼鏡を通して見た社会像をもっているものだよね。つまり、自分自身が妄想する社会の姿を持っている。でもそこから実際に社会に出て、色んなことを経験していく中で、徐々に本当の社会の姿が見えてくるものだと思う。この作品では、そういうことを歌っている。

――そこには有名なミュージシャンの子供として見られていたところから、あなたが徐々に自分の音楽を確立していくという意味も含まれていると思いますか?

うーん。音楽を作り始めようと思った時点で、私はもう自分の音楽を作っていたんだと思う。自分がそうしようと思った瞬間に、既にA地点からB地点に移動していたというか。ただ、周りの人は両親のイメージを持っているから、そういう人たちにはゆっくりA地点からB地点に向かっていくように見えた、ということなんじゃないかな。自分の中では、ミュージシャンになろうと決めたその瞬間から、私はずっとこの場所にいたと思う。

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――なるほど。では最後に、小さい頃の音楽にまつわる記憶と、今の音楽とのかかわりかたを比べて、どんな変化を感じるかを教えてください。

小さい頃は両親がミュージシャンだったこともあって、私にとって音楽は、教育として受け身に触れるようなものだったと思う。もちろん、当時から音楽は好きだったんだけど、「なぜ好きなのか」ということをあまり分析せずに、受け入れていたというか。でも、大人になった今は、自分がどんな人間になったか、どんな経験をしたかということの上に、音楽体験が降りかかってくるようになった。それは自分の音楽にも大きく影響を与えたと思う。そうじゃないと、子供の頃作っているものも今作っているものも、変わらなくなってしまうしね。内面的にも外面的にも色々なものを学んだことで、私の音楽も変化したんじゃないかな。

――今回のアルバムの中で、最もその変化を感じる楽曲というと?

それは“ドリームス”ね。なぜって、この曲はアルバムの中で一番最後に作った曲だから(笑)。今回のアルバムは16歳~17歳の頃に作った曲だから、今作っている曲はまた全然違ってきているんだけど。

――じゃあ、次はどんなアルバムになりそうかも見えてきている?

いいえ。それはきっと、まだ誰にも分らないことなんじゃないかな(笑)。

Leah Dou – May Rain Official MV (360VR Version)

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