日お届けした対談の前編では、音楽家とレーベルオーナーという共通項を持つ者同士として、お互いの活動の変遷を入口に、エレクトロニカという概念へのイメージ、そしてシーンに対する思いを語ってくれたmergrimmoshimoss

いよいよ完結となる後編は、それぞれの表現に寄ったトークを展開。先般リリースされたばかりの新譜『Hyper Fleeting Vision』と『endless endings』、お互いのアーティスト名の由来、制作環境など、彼らがこの機会に聞いてみたかった事柄が満載だ。前編に引き続き、今回も所々でAmetsubが参加。普段目にしている景色を特別な情景に変えたり、うっとりするような美しい自然風景を脳裏に浮かばせてくれる魔法のようなサウンドスケープを描くmergrimとmoshimossの、表現の核となる部分を垣間見ることが出来るだろう。

特別対談:mergrim × moshimoss

――音楽制作ソフトが普及して、今はPC上で楽曲制作できるようになりましたけど、制作拠点が良い意味で固定されなくなりましたよね。特に電子音楽家の方たちには自宅に制作環境を構えているという印象がありますけど、お二人の場合はどうなんでしょうか。

moshimoss 最初にミツさんとラーメン屋に行った話をしましたけど、ラーメン屋に行く前に、ミツさんの家にお邪魔させてもらったんですよ。そしたら家がスタジオみたいになっていて。色々なギターも置いてあったりして、「なるほど、ここで作ってるんだ」って刺激を受けたんですよね。ほんとシュッとした感じの立派なスタジオで。

mergrim いやいや、男の子なもんで基地を作るのが好きだから。

――たしかmoshimossさんも自宅で制作していますよね。

moshimoss でも、きったない部屋ですよ。

mergrim 元々楽器屋出身なので、人のスタジオとかはすごく気になるんだよね。

moshimoss 僕は音を作ったりする時、誰かに「この音、どうやって作るの?」って殆ど聞かないんですよね。その分、ミツさんの家とか色んな人の家に行くと、「あぁ、こういう環境でやってるんだ」って気になりますね。

mergrim その辺りはたぐり寄せるものだよね。そこに絶対に教えない人がいるじゃないですか。

――Ametsubさんは秘密主義なんですか?

mergrim 絶対に教えない。パソコンの後ろに人を立たせないんですよ。

moshimoss でも、なんとなくその気持ちは分かるんですよね。「パソコンの画面を見せて」って言われたら俺も嫌だな。どういうエフェクトが掛かっているとかを知られるのは、秘密以上に恥ずかしい部分なんですよ。俺がやってることは全て間違いだと思っているんで、間違ったままでいたい気分もあるというか。

mergrim 俺が遊びに行ったら部屋に入れてくれる?

moshimoss もちろん大丈夫ですよ。ほんと普通に楽器と機材が置いてあるだけなんで、秘密の機械なんて何もないですし。それよりも「こういう本、読んでるんだ」とか見られるのが恥ずかしい。あとはカーペットにガムがくっ付いているのを見られるのも(笑)。

mergrim ところでさ、なんでmoshimossという名前にしたの?

moshimoss え、moshimossの由来ですか?(笑)これは「もしもし」の響きに、苔の”moss”を合体させただけの話ですよ。なんで「もしもし」を選んだのかは自分でも分からないですけど。

mergrim mergrimも響きなんだよね。よくM&Aって聞くでしょう。M&Aってmerger andなんちゃらの略なんだけど、僕はそのmergeっていう名前で仕事をやっていたの。

【インタビュー】mergrimとmoshimossによる特別対談(後編)。お互いの制作環境、新譜、アーティスト名の由来などについて、さらにトークは深まってゆく…。 music130614_mergrim_moshimoss_23807-1

【インタビュー】mergrimとmoshimossによる特別対談(後編)。お互いの制作環境、新譜、アーティスト名の由来などについて、さらにトークは深まってゆく…。 music130614_mergrim_moshimoss_23791-1

――システム系の用語でもありますよね。結合させるみたいなニュアンスで。

mergrim そうそう。でも、それで音楽やるのは固いなと思ったんですよね。グリム童話の幻想的であり、グロさもある部分が好きだから、mergeにgrimを合体させたら字面としてシンメトリーな感じがして、響き自体がメルボルンみたいに街っぽくなって。『バグダッド・カフェ』っていう映画が好きなんですけど、バグダッド・カフェを中心とするさまざまな人物の物語があるように、mergrimという仮想の町があって、それに行き着く間での出来事を切り取った音楽みたいなコンセプトなんです。街に行くための物語というか。

――mergrimを名乗る一方で、本名の光森貴久としても活動していますよね。

mergrim 広告音楽とか、もうちょっと分かりやすい音楽をやる時は本名でやりますね。mergrimはプライベートというか。情景メインの音楽という感じかな。

moshimoss 僕も元々は本名のKosuke Anamizuで四つ打ちをやってたんですよ。はじめて12インチを出した時も本名でしたね。それと区別するためにmoshimossって付けた感じですけど、自分のことを気になった人が検索しやすい名前がいいなとも思いましたね。

mergrim 分かる、分かる。

moshimoss 気になって検索したのに、出てこなくてイラついたりするじゃないですか。オプションとして検索しやすかったらいいなって感じで、元々ない言葉にしたかったんですよね。

――Ametsubさんも最上位でヒットしますよね。

mergrim でも日本語に雨粒ってあるから、最初はそうでもなかったんじゃない?

Ametsub たしかに、最初は読めなかったんじゃないかな。

mergrim アメットサブとかね。

moshimoss ムエタイ強そう(笑)。

★インタビューまだまだ続く!
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