——ダブルAサイドのもう1曲、“Raise Me Up”は、MIYAVIさんのテレキャスターもエフェクティヴで、テンポ感はミドルなのに印象は尖っているという、不思議なバランスです。

ポップさとエッジーさとのバランス? 疾走感も含めて、近づいてきたかなと思っています。ハーフタイムのビートとトラップの感じとか。最近、ビート速い曲自体ないもんね。大体、ハーフタイムかR&Bか。最近で言ったらマーク・ロンソンが一番速いんじゃないかなってくらい。

——(笑)。たぶん日本のロックは倍ぐらいのBPMじゃないですか?

倍ある。ていうか、細かさ、歩幅が違う。心臓のビートも違うんじゃないかって思うぐらい。スーパーマーケットのでかさも、リリースのサイクルも違う。自分にもすごく感じるんだけど、日本人、アジア人は骨格もフラットでしょ? デプス、ビートの深みを味わえるか味わえないか。遅いビートもその深みを味わえるから楽しんでいるわけで、欧米に比べて俺たち日本人はそこまで深みを味わえてない気がする。パラパラみたいなBPMもガンガンあるでしょ? こっから上(手首)しかノッてないみたいな(笑)。でも、それを俺、悪いと思わないんですよ、それが日本のある種のアイデンティティだったりもすると思うし。ただまぁ、それを共通言語にするのはしんどいかなっていうのは正直あります。いきなりBPM180とか、結局誰もノってなければ意味ないじゃないですか。どっちがいいとかじゃなくて、BPMの違いはそう感じるし、今回の作品だけじゃなくて、そこに対して自分のギターのアプローチの仕方も変わってきましたね。スラップだけじゃないところでのアイデンティティも踏まえて。スラップは短距離走なんです。

MIYAVIが目指す新境地とは。ライブレポ&インタビューで紐解く interview160428_myv_10

photo by TOMOMI CHIJIIWA

——見る方もパフォーマンスとして驚くし。

そうそう。ただ、あれはワサビなんですね。でもワサビばっかり食っていられないじゃないですか。そこで寿司のシャリだったり、もっとギターで歌えるように。ソロとかも、自分流のスタイル、表現方法で。これは前作で学びましたね。

——一方、素材的にギターを使ってもいて。

今ね、ギター自体も進化させようとしていて、ぶっちゃけ邪道なんですよ、今やろうとしてることって。ギターロックの歴史から見たら。でもまた新しい時代の解釈でちゃんとそれをやれれば、いいんじゃね? って。それがかっこいいと思わせられたら勝ちだし、思われなかったら邪道で終わりだなって思っています。

——話は変わりますが、“Raise Me Up”のMVをファンタジスタ歌麿呂さんが手がけられて、アートワークともリンクしているんですね。

そうそう、今回、ファンタジスタ歌磨呂くんにお願いして。なんかNEWな時代感がいいなと思って。これまでというより、これからだなぁって感じられるかどうか。自分もそれを欲しているし、血と肉になるものを感じていますよね、作品としてね。だからライブの仕方も変わってくるだろうし。もっともっとチームで押せるようにというか。今まで一人でも戦ったる、全員斬ったる! と思ってきたけど、それじゃ全部は無理だなと。特に戦車はね、キリがない(笑)それならチームで、戦車に爆薬を仕掛けるじゃないけど、どう違ったやり方で攻めれるか。それがなんなのかっていうのはまだ模索していますけど、それが見つかった時は、勝つ瞬間なんだろうなと、ホントの意味で。もしかしたら戦車の、鉄砲の弾の向く方向が変わるかもしれないし。全然戦わないってことかもしれないし。ただ、刀は研ぎ続けていようとは思います。迎合でもなく、新しい形でね。

MIYAVI「Raise Me Up」Teaser Video

——そこまでアティチュードを変えようと思う動機は、やはりアメリカで感じる日常がリアルに日本と違うからですか。

感じますね。ホントに空港行ってもスーパーマーケット行っても、国力の差というか、人間力の差というか。やっぱそれは教育から来ていますし、教育する人間のアティチュードからも来ていますし、対話力もそうだし。ただやっぱ、そうなると思うのは、日本の強さって、狂気とホスピタリティだということにも気づくんですね。

——感受性ということ?

うん。そこは自分も感じるし、他のアメリカ人とセッションしていて、あ、多分こいつら今俺のこと怖いじゃないけど、「何考えているかわからない」と思っているんだろうなと思う時がある。まあ日本の人も思ってるかもだけど(笑)

——それは強みですよね。

うん。こんなに食べ物を生で食う民族もいないよね。卵も生で食うし、魚も生で食うし、牛まで食っちゃうじゃないですか(笑)。

——(笑)。それってどこからが危ないか分かっているからですし。

でしょ? でも向こうからしたらもう狂っているとしか言えないわけじゃないですか? でもそれが日本人の繊細さ? ディティールの繊細さで、最終的にはホスピタリティとも繋がっているんですけどね。

——狂気とホスピタリティは背中合わせかも(笑)。そして、リミックスをSeihoさん、Jonny Dopeさんが手がけています。

うん、理由は一緒ですね、ファンタジスタ歌磨呂くんと。俺もどんどんどんどん感化されていきたいし、自分自身も刺激を受けたいし。自分より若い世代の人とやることによって自分もなんか感化されて、学ばされますし。こうでこうでっていう理論やセオリーがない世代だし。

——そして9月からはジャパンツアーが始まりますね。

久しぶりですね。やっぱ日本はホームカントリーだし、アメリカに行って武者修行の最中ですけど、日本のファンの人たちみんながなんだかんだこうやって離れていても、応援してくれている、信じてくれている。嬉しいですよ。もっとやろうと思わせられるし。また飯屋の話ですけど、一見さんお断りの寿司屋で、一ヶ月二ヶ月休養しますって言っても、再開したらまた来てくれる。それって信用じゃないですか。その一ヶ月二ヶ月でこっちもやっぱ何かを学んで、それを見せたいし、それを感じに来てくれる人たちなので。ま、日本だけじゃないですけど、日本は自分のホームカントリーとして、コンスタントにやっていきたいですね。この国の人たちにとっても自分は、為すべきこと、自分の役割を通じて、「俺たち行けんじゃん」っていう、「もっと行こうぜ」っていうのを俺は提示したい。鉄砲の切り方はわかったので、戦車の壊し方? また戻りますけどーーなのかどうかわかりませんけど、日本人として提示することによって、今度はこの国のね、パワーというかエナジーというかエキサイトメントを共有したいんですよね。日本人から見て「あ、やってるね」だけじゃもう意味がないというか、そのセクションは俺はもう卒業したんで今度はもっとググッと、その先を見せたいと思います。

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photo by MASAYOSHI SUKITA

EVENT INFORMATION

MIYAVI Japan Tour 2016 “NEW BEAT, NEW FUTURE”

2016.09.19(月・祝)札幌・PENNY LANE 24
2016.09.21(水)仙台・Rensa
2016.09.22(木・祝)金沢・EIGHT HALL
2016.09.24(土)松山・W Studio RED
2016.09.25(日)広島・CLUB QUATTRO
2016.09.27(火)熊本・B.9 V1
2016.09.29(木)福岡・DRUM LOGOS
2016.10.01(土)大阪・なんばHatch
2016.10.02(日)名古屋・ダイアモンドホール
2016.10月.10(月・祝)東京・幕張メッセイベントホール

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RELEASE INFORMATION

デジタル両A面シングル「Afraid To Be Cool/Raise Me Up」

2016.04.29(金)全世界一斉配信 ※04.13(水)〜プレオーダー開始
MIYAVI

1.Afraid To Be Cool ※「アサヒドライゼロ」CMソングASAHI DRY ZERO(ノンアルコールビールテイスト)CMソング
2.Raise Me Up ※ヨコハマタイヤCM 楽曲インスパイアソング
3.Afraid To Be Cool(Seiho Remix)
4.Raise Me Up(Jonny Dope Remix)

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