——アルバムでいうと、どのあたりのストーンズが好きですか?

渋谷 ベスト盤から聴き始めたので、どの時期にどのアルバムが……とか正直なところよく分からないんですよ。ただ、一番好きなのは最新作。その年齢で新作を出すんだ! っていうところにまず驚かされたし、しかもちゃんと今っぽいんですよね。「かっこいい!」みたいな。

モリタ 確か中学生の時だったと思うんですけど、村上春樹の『ダンス、ダンス、ダンス』という小説を読んだら、ストーンズの“Brown Sugar”について書いてあったんですよ。カーラジオから流れてきたこの曲を聴いて、主人公が「まともな曲だ」みたいなことを言う。

そうか、“Brown Sugar”はまともな曲なのか、と思ってディスク・ユニオンへ買いに行ったんですけど(笑)、2人と同じように最初は何のこっちゃ分からなかった。で、大学生くらいになってからかな、60年代後半のサイケデリックな音楽にハマりだした頃に、俺も『Let It Bleed』とか聴いてぶっ飛んだという感じですね。

——サイケデリックな音楽というのは例えば?

モリタ シド・バレットがいた頃のピンク・フロイド。メチャクチャ好きでしたね。でも、それは何でだったんだろう。元々僕はグランジが好きで、そこから色々掘っていくうちに辿り着いたのがサイケだったんです。ストーンズは、俺のイメージでは典型的なロックバンドだったんですけど、60年代後半のちょっとサイケがかった頃がすごく良いんですよね。アルバムでいうと、『Let It Bleed』以外には『Flowers』や『Their Satanic Majesties Request』、『Beggars Banquet』あたりかな。

【インタビュー】TENDOUJI×sui sui duck×RAMMELLSメンバーが語るザ・ローリング・ストーンズ rolling-stones-0046-700x467

──皆さんが今やっている音楽の中に、ストーンズの影響ってどのくらいあると思います?

真田 うーん、RAMMELLSにおける楽曲やギターのアプローチでは、ストーンズの影響は0パーセントですかね(笑)。でもキース・リチャーズが、ギターのストローク一発で全てを持っていく感じとか憧れます。真似したいと思っても、なかなか真似できないじゃないですか。

——でも、真田さんの髪型とか出で立ちは、若い頃のキースっぽいですよね? しかもブルゾンにはリップス&タン・ロゴのステッカーが。

真田 ありがとうございます(笑)。そうなんです、今日の取材に着ていく服は「これ以外にないよな」と思って。個人的にはキースとブライアン・ジョーンズが一番好きですね。ファッションは、ミュージシャンの中でもキースが一番好きです。60年代だけじゃなくて、最近のファッションもカッコいいと思う。2014年の来日公演初日へ行ったんですけど、他のメンバーが衣装を頻繁に変える中、キースは最後まで同じ衣装で。それが超カッコいいと思いましたね。

渋谷 それ、俺も行きましたよ。

モリタ 俺も!(笑) もう、最っ高でしたね。俺も初日に行ったんですけど、TENDOUJIがオマージュした“Get Off Of My Cloud“を、ライブの1曲目に持ってきてくれたんです。「やべえ、俺ら超持ってる!」みたいな。

(一同笑)

モリタ それでもう、ブチ上がりして。ストーンズのメンバーが目の前に生で存在していること自体も非現実的でしたね。周りは年配の方ばかりだったんですけど、一緒になってメチャクチャはしゃぎました。

渋谷 ライブを観ていて印象的だったのは、メンバーみんなちょくちょく間違えるんですよ(笑)。

モリタ そうそう! 「キース、ギター下手だな」って思ってしまった(笑)。

真田 ヘタなのに音がデカイんですよ。そこがまた最高(笑)。

渋谷 もちろん、ライブそのものが演奏力の向こう側に行っていたので、下手で全然OKなんですけどね。もう、立っているだけで様になるのに、キースもミックもステージを狭しと動き回るじゃないですか。とにかく現役感がハンパない。

真田 あの動きを見て、「ロック・スターは健康じゃなきゃなれない」と改めて思いましたよ(笑)。

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——でも、皆さん20〜30代じゃないですか。70歳を超えたメンバーが、現役で演奏している姿はどんな風に写っているんでしょう。

渋谷 「パンチの効いたお爺ちゃん」という感じですかね。彼らが着ている服とか、俺が70歳になった時は絶対に着られないと思うし……革パンとかムリでしょ(笑)。ミックとかガリガリで、スタイル維持にすげえ気をつけているのだろうなって思った。そこらの70歳ではないですよね。

モリタ 全く同意。スーパー・エンターテイナーだと思います。あと、ビジネスのことも凄くシビアに考えているじゃないですか。すごく好きな話があるんですけど、2006年の<スーパーボウル>のハーフタイム・ショウに、彼らが出演したことがあって。その時の仕掛けが、リップス&タン・ロゴをあしらったステージからバンドがサプライズで登場するというものだったんですね。

つまりミックは、その狭いステージ下のスペースに出番までずっと閉じ込められていた。時間にして10分くらいかな。そのことをスタッフがミックに謝ったところ、「全く問題ない。このロゴがテレビで放映されている今、この瞬間に俺に幾ら入るか知ってるか?」って言ったらしいです。あれだけ稼いでいるのに、まだお金に固執するのって逆にカッコよくないですか?(笑)。

(一同笑)

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——sui sui duckは、メンバーにアートディレクター(高橋一生)が含まれているじゃないですか。ストーンズの音楽性だけでなく、アートワークなどにも刺激を受けるところはありますか?

渋谷 おそらく高橋は、ストーンズあんまり知らないと思いますけどね(笑)。でも、例えばリップス&タン・ロゴを作るなど、彼らは若い頃からセルフ・プロデュース能力に長けている。そこは真似したいなって思いますね。こういうアイコンが一つでも作れれば違うじゃないですか。このマークを知らない人なんていないし、もしかしたらストーンズそのものよりも有名かもしれない(笑)。