──仲田さんは、今回のアルバムについてどのような手応えを感じていますか?

仲田 正直、(完成した当初)今までで一番ピンとこなかったけど、だんだん良さというか。なるほど、って思える部分が出てくるアルバムだなって。過去の作品って、いつも完成した瞬間に手応えを感じていたけど、世の中に出した時の反響って自分が想像していたものとは異なっていて、何でかな? という気持ちもあったりした。けど、このアルバムがバンドの突破口というか。聴きやすい内容の仕上がりになったと思いますよ。これがきっかけで、過去の作品にも注目してくれる人が増えたらいいなって。

──そんなこんなアルバムのタイトルを『きれいな血』にした理由は? 日本語タイトルって初めてではないかと思うのですが

浅井 たまには日本語をタイトルにしたいなって思っていて、今回がそのタイミングだと。いろいろ探っていくなかで、この言葉がぴったりだろうってことになった。

──みなさんが、きれいな血(ピュアな衝動)で音楽と向き合う姿が、伝わってきました。

浅井 自分たちがきれいがどうか、わかんないけどね。(笑)

福士 一度、血液検査してみようか?(笑)

浅井 でもさ、世界を変えてしまえるような血じゃん。いろんな民族や血統があってさ、血ってすごいじゃん。そいで血がね、モノを言っとるよね。きれいな血を(収録の)12曲のなかから感じてほしい。何か(感じるものが)ある気がするんだよね。

──アルバム・ジャケットに写し出された瞳からも、純粋さが伝わってきました。

浅井 あの肌色で統一した感じも、いいよね。

──そんなアルバムからのリード・トラックとして発表されたのが“LADY NEDY”。これは、疾走感のあるエモーショナルなナンバーですね。

浅井 これはアルバムのなかでもノリがいいから。そういう曲をリード・トラックにしたほうがいいと思っただけ。

SHERBETS “LADY NEDY”(Official Music Video)

──続いて発表された“ひょっとして”は、アルバムの冒頭も飾っていますが、サイケデリックでメランコリックな仕上がりですね。

浅井 この曲を演奏していると“燃える”んで、いいと思った。

SHERBETS “ひょっとして”(Official Music Video)

──何か新しい人生の旅の始まりを感じさせる、深みのある内容だと思ったのですが。

浅井 そこ(解釈)はお任せするわ。“燃える”から、それだけなんだよね。他の曲も今回は静かに燃えとるものがいっぱいある。

仲田 それがカッコいいと思うんだよね。

浅井 そろそろ酒が廻ってきた?(笑)

──前日は朝まで飲み明かしていたそうです。(笑)

仲田 俺はさ、好きでいろんなライヴとか行ってるじゃん? そのなかでも「へぇー」って印象に残っているのは、30年くらい前に観たピンク・フロイドなんだよね。彼らの曲って、オーッと盛り上がるものじゃないじゃん。でも、ふと周りを見渡すと、OLみたいなお姉ちゃんが泣いているんだよね。静かに感動しているんだよね。イェイ! イェイ! だけじゃない楽しみ方もライヴにはあるんだなって知った。俺たちも年齢を重ねてきている訳だし、静かに感動できる曲をここで表現できたってことじゃないのかな。

──静かに感動や興奮を噛み締められるアルバム。制作のなかで最も「血」が騒いだ瞬間は?

浅井 俺はタイトル曲“きれいな血”。これは歌も同時に録ったんだけど、その時も、完成した瞬間も静かに燃えていた。これが完成して、アルバムがいいものになるって確信できた。その後もいい曲はできたんだけど、過去みたいに毎回完成するたびに「みんながひっくり返るどえりゃすげえアルバム」だと思わなかった。以前は、そう思っていても、全然みんなひっくり返らないし(笑)。だから、今回はいつもと違う反応が出るんじゃないかって期待しているけどね。

外村 俺はやっぱり“ミツバチ”かな。“水たまり”をテーマにして作ったものなんだけど。自分の思い通りに完成した瞬間に血が騒いだよね。実はこの作品が完成するまでは『AURORA』を超えるものは作れないと思っていたんだけど、これがベストだなって。(いい音の)更新ができた感じがする。

福士 私も、自分の作った“She”が完成した時かな。今回は、みんな曲を作ろうという方針があって、私はベンジー(浅井)や外ちゃんの作ったものを聴いて、こんな存在の曲があってもいいのかな? という気持ちで臨んだものなんですけど。やっていくうちに、自分の伝えたいことすべてをここに集約させようと思ったんです。それで、今の日本・世界で生きていて感じることを詰め込んでみました。それができてよかったなって。また、他の収録曲にもそれぞれよさがあって。例えば『きれいな血』は、レコーディング前に準備をしようとしたら、歌詞の素晴らしさで世界に入り込んでしまって一日半くらい泣いてしまい、作業が滞ってしまったほど。おかげで、レコーディング時は体調が悪くなってしまったけど、そんな気持ちになれるっていいなって。また、外ちゃんが作った“ミツバチ”も、初めて外ちゃんが歌詞をメンバー全員に見せた瞬間のドキドキした表情を思い出したら、絶対にいい仕上がりにしなくては!と思ったし。とにかく全曲にいろんな思いが詰まっていますね。

仲田 俺の場合は血が騒ぐとは、ちょっと違うのかもしれないけど、自分のベースと曲の世界がうまくハマった瞬間にうれしさは感じたよね。今回は、みんなの演奏の方向が固まる瞬間が多かったのも、よかった。また個人的には『Freeze Market』でニューウェーブな感じが出ているのも好きだね。

SHERBETS全員が語る、新作や自身の“血”について interview150619_sherbets_2

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