今年で17回目の開催を数える<フジロック・フェスティバル>。その歴史において、超人的なジャズ・プレイヤーやジャム・バンドが幾多もの伝説を築きあげてきたことは有名だろう。とりわけジャズ発祥の街=ニューオーリンズのバンドと<フジロック>の親和性は素晴らしく、これまでもギャラクティックやファンキー・ミーターズ、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド、トロンボーン・ショーティ、ダンプスタファンク……etcといったニューオーリンズ勢が、苗場を巨大なファンク・グルーヴで踊らせてきた。
満を持しての初来日&苗場見参となるザ・ホット・8・ブラス・バンドもまた、ニューオーリンズを代表する8人組のブラス・バンド。ジャズ、ファンク、ヒップホップを鮮やかに横断したサウンドと、ストリート仕込みの脅威のバンド・アンサンブルが話題を呼び、モス・デフやメアリー・J・ブライジ、さらにローリン・ヒルといった大物アーティストたちのバック・バンドも務めたほどの実力派だ。ハリケーン・カトリーナで亡くなったメンバーらへの追悼の意味も込めた最新3rdアルバム『トゥームストーン』では、喜び、怒り、哀しみ、楽しさ、あらゆる感情を燃えるようなパーティー・ヴァイブで表現している。自然災害と音楽の結びつきといえば、我々日本人にとっても人ごとではない。バンドの中心人物/スーザフォン奏者のベニー・ピートに話を聞いた。
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Iinterview:Bennie “Big Peter” Pete (sousaphone and band leader)
ライヴを楽しむコツなんて何もないね。
ただ僕たちのライヴに参加してくれれば、それでいいんだよ!
――最新3rdアルバム『トゥームストーン』は、もともと前作『ザ・ライフ&タイムス・オブ…』の収録曲とあわせて1枚の作品としてリリースする予定だったんですよね。今回はアートワークもモノトーンですし、この2枚が光と影…あるいは陰陽のように対になっている印象も受けます。それぞれどのようなコンセプトが込められているのでしょうか?
うん、君の言うとおり、もともとは1枚のアルバムとして出す予定だったんだ。だから特に2枚にわけて出すつもりで制作したわけでもなく、楽曲も同時期に作っていたものが大半なんだよ。同じアルバムに入れるつもりで曲を作っていたわけだし、どちらにも共通したエッセンスはあると思うんだけど、『トゥームストーン』にはとりわけ「葛藤」や「辛さ」をすべて詰め込んだ。そこが少し強調されて聞こえるのかもしれないね。
――”The Life & Times of”の後に続く言葉が”Tombstone”だったのでしょうか? それとも、この”of”以降の解釈はリスナーに委ねられている?
いや、言葉の続きという意味でつけたアルバム名じゃないよ。”The Life & Times of”のタイトルがここで終わっているのは、明確に「何の」”The Life & Times of”なのか――という風に言い切りたくなかったからなんだ。リスナーには色んな意味で解釈してもらえたら嬉しいよ。
――個人的には、『トゥームストーン』のほうがヒップホップ色/メッセージ色を強く感じました。手元にクレジットが無いので申し訳ないのですが、アルバム中でラップをしているのは誰?
僕もやってるし、メンバーみんなそれぞれ歌ってたりするんだ。
――3曲目“Homies”の中盤では、K.C.アンド・サンシャイン・バンドの“That’s the Way (I Like It)”も引用していて、非常に「パーティー感」「ライヴ感」が強いアルバムだとも思いました。曲作りはジャム・セッションやインプロ(即興)をもとに発展していくのでしょうか?
そうだね、この曲に関してはジャム・セッション的に作り上げたかもしれないな。曲によって作り上げる過程がちょっと違うんだけど、基本的に誰かが曲の雛形を作ったら、それをみんなで聞いてまた誰かがアイディアを発展させて……っていう感じで作ることが多いかも。そうすることで、曲作りのプロセスにも「ライヴ感」が増すだろ? 言われてみればたしかに、セッションからアイディアが派生して曲が完成することは多いかもしれないね。
――また、日本盤CDには、スティーヴィー・ワンダーの“All I Do”のカヴァーがボーナス・トラックとして収録されています。この曲をチョイスした理由は?
だって、日本のファンのためだけのスペシャルなボーナス・トラックだぜ!? 僕たち自身が大好きで、かつスペシャルなものにしなくちゃと思ってこの曲を選んだんだ。
――そういえば、前作にはスペシャルズとベースメント・ジャックスが、デビュー作『ロック・ウィズ・ザ・ホット・8』(07年)にはマーヴィン・ゲイやスヌープ・ドッグのカヴァーも収録されていましたね。基本的にライヴでプレイしてみて反響の大きかったカヴァー曲をレコーディングしているのでしょうか?
カヴァー・ソングをやること自体はけっこう簡単で、ライヴでもたくさん披露しているけど、レコーディングまでしてアルバムに収録するっていうのはすごくレアなことなんだ。今までのカヴァーもスペシャルなボーナス・トラックとして収録しているからね。選曲に関しては、やはり僕たちの中で特別だと思ったものをセレクトしているよ。
――ザ・ホット・8・ブラス・バンドの楽曲が放つ凄まじいエネルギーとグルーヴには、ハリケーン・カトリーナが起きた当時のブッシュ政権に対する「怒り」が大きく作用していたんじゃないかと思ってます。オバマに政権が移った後、ニューオーリンズの復興は少しでも前進していますか?
正直、ブッシュ政権の時は被災地の復興もロクに進んでいなくて、瓦礫なんかも手つかずの状態だった。でも今の政権に代わってからは、街の復興が目に見えて進んでいってるって実感できるようになったね。街は活気を取り戻しているし、ビジネスも発展してお店やホテルもたくさんできて、観光客も大勢来るようになったしさ…。そういう意味では、すごく前進していると感じるな。
★インタビューまだまだ続く! 次ページでは災害によって亡くなったメンバーのことや、バンクシーとの出会いについて語ってくれています。