「安眠できる楽曲プレイリスト」というテーマのもと、2018年にリリースされた楽曲の中から5曲を、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界唯一のバンド公認カメラマンとして世界中を回り、共同編集に『シューゲイザー・ディスク・ガイド』、『ビートルズの遺伝子ディスク・ガイド』や著書に『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』、『プライベート・スタジオ作曲術』などで活躍しているフリーランスのライター/カメラマン・黒田隆憲さんが紹介。

黒田隆憲さんがセレクトした安眠ソング5選

Bassackwards/Kurt Vile

まずは、フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター、カート・ヴァイルKurt Vile)。彼はザ・ウォー・オン・ドラッグス(The War On Drugs)の初代ギタリストとしても知られ、2ndアルバム『Slave Ambient』をリリース後に脱退すると、平行していたソロ活動に専念。

初期はプリミティヴでローファイなサウンドを奏でていたが、名門〈Matador〉に移籍しての3rdアルバム『Childish Prodigy』あたりから次第に頭角を表すように。4thアルバムの『Smoke Ring for My Halo』は、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)直系の優れたソングライティング能力と、ザ・ウォー・オン・ドラッグス譲りのサイケデリアが融合したサウンドスケープにより、USインディ・シーンに鮮烈な印象を残した。

昨年はコートニー・バーネット(Courtney Barnett)とのコラボ作『Lotta Sea Lice』をリリースするなど話題に事欠かない彼だが、この曲は通算7枚目となるアルバム『Bottle It In』からの先行シングル。

どこかルー・リード(Lou Reed)の「Walk on the Wild Side」を思わせる楽曲で、アコギによるヒプノティックなアルペジオと、折り重なる逆回転(?)サウンドの反復が、心地の良い眠気を誘う。

Pay No Mind/Beach House

ビーチ・ハウスBeach House)は、映画『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』、『華麗なる賭け』などのサントラを手がけたフランスのピアニスト、ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)を叔父に持つヴィクトリア・ルグランと、米国メリーランド州ボルチモア在住のアレックス・スカリーによって結成されたデュオ。

TVオン・ザ・レディオ(TV on the Radio)や、ヤー・ヤー・ヤーズ(Yeah Yeah Yeahs)との仕事で知られるクリス・コーディーをプロデューサーに迎えて制作された3rdアルバム『Teen Dream』で話題に。日本でも、本作収録の「Zebra」が映画『八日目の蝉』で印象的に使われ密かに話題となった。

この曲は、彼らが元スペースメン3(Spacemen 3)、現スペクトラム(SPECTRUM)のソニック・ブーム(Sonic Boom)と共に制作した通算7枚目のアルバム『7』に収録された楽曲で、疾走感溢れるオープニング曲「Dark Spring」から一気にギアを落として演奏される、スローコアなナンバー。

サビの男女混成ヴォーカルや、コード進行に対するメロディの乗せ方が、どことなくピクシーズ(Pixies)を感じさせるのも興味深い。引きずるようなドラミングや、気だるく歌われるヴィクトリアの歌声に包まれていると、体の力が徐々にほぐれていくようだ。

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