Interview :Arctic Monkeys ~後編~

——ついに完成した新作『AM』、全曲について質問したいほど、聴けば聴くほど細かいアレンジが面白く、クセになる作品です。まず確認したいのが、作り始めるにあたって描いていた青写真、方向性とはどういうものでしたか?

アレックス・ターナー(以下:アレックス)  一年くらい前、いや、一年ちょっと前に”R U Mine”って曲をリリースして、ある意味、この曲にインスパイアされて作られたアルバムなんだ。この曲を中心にしたアルバムを作ろうと思った。それだから・・・ある意味、”R U Mine”がこのアルバムに収録された他の曲の青写真だったってことになる。マットも言ってたように、”R U Mine”のヴォーカルっていうかコーラスっていうか、ああいったメロディーをもっと探求してみたかったんだ。

“R U Mine”

——”Do I Wanna Know”や”R U Mine”を筆頭に、今回は一つのギターリフやフレーズを繰り返す曲が多いのに、そこに加わる楽器のアレンジやコーラスの巧みさで、他では聴いたことのなかったタイプの曲ばかりが生まれています。一回聴いたら忘れられない曲ばかりなのに、曲の構造、ビートの乗り方、コーラスや演奏の音のバランスなどの面で、もしかしたらアークティック・モンキーズ史上最も「実験的」な作品という印象を受けました。実験的、という言葉はしっくりきます? もしこなかったら、あなたたちならこのアレンジや構造の面白さをどういう言葉で言い変えますか?

アレックス 確かに実験的な要素っていうのはあると思う。違った2つの面が衝突するっていうか、スイートでメロディアスな面と70年代ロックン・ロールのあの高音のほとんどオペラみたいなヴォーカルがさ。そういったところが少し実験的と言えばそうなのかな。俺達にとって最もオリジナルな内容のアルバムだと思う。サウンドに関して言えばね。

——マットがこれほどバックコーラスを唄っているアルバムは初めてで、今回は”One For The Road”や”I Want It All”、そして”Kneesocks”をはじめ、コーラスが非常に重要な役割を果たす曲が多いですね。今回、ここまでコーラスをフィーチャーしようと思ったのには何かきっかけがあったんですか?

マット・ヘルダース(以下、マット) どうだろう、思うに、コーラスを強調してみるってことをこのアルバムの特徴のひとつにすることになった時、コーラスをもっと書いてみることにもっと時間を費やすことになって、それで、違ったパートのコーラスを重ねてみたんだ。ニックが低いパートと高いパートをやったとしたら、俺がその高いパートに重ねて歌ってみるといった具合にね。1曲、2曲そういうふうにやってみて、やり過ぎないようにしながらも出来るだけ多くの曲もそうしてみた。そしたら、俺達の知り合い全員がそういったアレンジを凄く気に入ってくれて、それで俺達もやった方がいいと思ったんだよ。