そうして完成させた13年の前作『リキッド・スピリット』は全世界で100万枚以上を売り上げ、2000万回以上のストリーミングを記録。現存するアーティストによる作品の中で、世界で最も聴かれたジャズ・アルバムとして広く知られている。翌14年の<第56回グラミー賞>授賞式では、この作品でベスト・ジャズ・ヴォーカル・パフォーマンス部門を受賞した。

ディスクロージャーを筆頭に広がる多彩&超豪華なコラボレーションの数々

とはいえ、多くの現代ジャズ・アーティストと同様に、グレゴリー・ポーターの活躍はジャンルを越えた多彩なコラボレーションを抜きには語れない。彼は自身の作品で頻繁に「水」をモチーフにしていて、ここには「時代と共に形を変え、流れる水のように様々な場所にアプローチする開かれた精神」が反映されているそう。中でも決定打となったのは前述のディスクロージャーの2作目『カラカル』での共同作曲&客演。ここではサム・スミスやロードといった今をときめくヴォーカリストと共に彼の歌声がフィーチャーされ、クラブ・シーンの先端を走るディスクロージャーにとっても、現代のジャズ・シーンがエキサイティングなものであるという事実を伝えてくれる。

Disclosure – Holding On ft. Gregory Porter

また、<iTunes Festival>ではアフリカンなルーツと現代的な和声を組み合わせてローラ・マヴーラとは“Water Under Bridges”でデュエット。スタジオ音源はEP『More Liquid Spirit – Features + Remixes』に収録された。ジェイミー・カラムとも彼の14年作『Interlude』の収録曲“Don’t Let Me Be Misunderstood”で共演。この曲はニーナ・シモンによる64年曲のカヴァーで、近年ではラナ・デル・レイの『Honeymoon』に収録されていたことも記憶に新しい。若手勢だけでなく、ヴァン・モリソン(“The Eternal Kansas City”)やスティーヴィー・ワンダー、キャロル・キングなど錚々たるレジェンドたちとの共演も多数。そのコラボレーションはジャンル/世代ともに多岐にわたっている。

Gregory Porter – Water Under Bridges ft. Laura Mvula

Van Morrison, Gregory Porter – The Eternal Kansas City

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