初日は雨こそ免れたものの極寒で、フードエリアでは肩を震わせながら汁物をすする来場者が目立っていたが、優しくも荘厳なドリーム・ポップでオーディエンスを温めてくれたのはドーター。今回は年明け1月にリリース予定の『ノット・トゥ・ディサピアー』を引っさげてのカムバックということで、超絶キュートなサポート・メンバーを従えて4つの新曲も初披露、全員が黒で統一した衣装はどこかポーティスヘッドを彷彿とさせた。イントロをミスってやり直したりバンド側も試行錯誤の状態に見えたが、シガー・ロスが初期コールドプレイを演っているかのようなスケール感&メロディ・センスに、〈4AD〉らしい耽美なコーラスやエレナ嬢のハニカミっぷりは健在。冬の訪れを祝福してくれた“Winter”に、暴風雨のごとき轟音でクライマックスを迎えた“Home”などの代表曲もプレイし、よりタイトに引き締まった演奏からは早くも次回の来日が楽しみになった。

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そして初日の大トリを務めるのは、主催のプラグ氏も念願だったと語るメルヴィンズ。本人降臨のサウンド・チェックから只ならぬ爆音をブチかましていたが、前列のオーディエンスが黒Tシャツやスリープ(ストーナー・ドゥームバンドの神的存在)のパッチを縫い付けたベストで「完全武装」したファンたちで埋め尽くされている光景は圧巻だった。そう、彼らは同日にバッティングしていた<オズフェス・ジャパン>ではなく、メルヴィンズのために<HCW>を選んだ“ガチ”のファンたちなのだ。場内が暗転し、ドラマーのデイル・クローヴァーが焦らしプレイでオーディエンスを煽ると、ベーシストのジェフ・ピンカス(元バットホール・サーファーズ)と、目玉のローブをまとった白髪の化身=バズ・オズボーンが登場。名盤『フーディニ』(93年)収録の“Hag Me”で幕を開けると、後はもう90分間ノンストップのメルヴィンズ劇場だ。

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ミリタリーケイデンス(軍隊の行進曲)を取り入れた“The Water Glass”をはじめ、新旧織り交ぜたスラッジ・サウンドは腹の底に響く激重の低音ながら不思議と心地良く、ローディーが出てくる隙さえ与えない徹底した音密度とプロフェッショナルなステージ運びには感服。それに、ジェフが帽子を床に叩きつけるキレ芸などダチョウ倶楽部を思わせるシーンもあり、「超カッコイイのに笑える」パフォーマンスは翌週来日したシェラックと通じる部分もあった。終盤ではバットホール・サーファーズの“Graveyard”や、ワイパーズの“Youth Of America”といった贅沢なカヴァー曲も飛び出し、アンコール無しも納得の充実度で大団円。3.11で東京公演が当日キャンセルとなってしまったあの日から4年半、再びメルヴィンズをこの目で拝めたことに心から感謝したくなる一夜だった。

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