『ポスト・ポップ・ディプレッション』は、イギー流の落とし前?

ヒップホップ・アーティストでさえ腰を抜かすほど「コラボの人」であるイギー・ポップだけに、現在進行形で複数のコラボ・プロジェクトが動いているであろうことは想像に難くない。もちろん、その究極のアウトプットとも呼べるのが、今回の『ポスト・ポップ・ディプレッション』なのだ。イギーとジョシュがいつ、どのように親交を深めていたのかは不明だが、文字通り手を取り合って完成したアルバムは、ロックの未来を切り開いてきたイギーにとってある種の「落とし前」と言えるのではないだろうか。

新作はホントに最終章?イギー・ポップの華麗なるコラボ遍歴にフォーカス music160324_iggypop_2

ボウイと過ごしたベルリン時代を回想するような“German Days”という曲もあるが、そのサウンドにキャリアを総括する懐古的な印象はゼロ――というか、攻めまくり。オープニングを飾る“Break Into Your Heart”の、背徳的でヒリヒリとしたヴォーカル/ギター・ワークにはとにかくシビれる。

Iggy Pop – Break Into Your Heart | #PostPopDepression

アルバム全編を貫くのは、QOTSA仕込みのズシンと重たいバンド・アンサンブルと、ハード・ロックやブルース・ロックを下敷きしたメロディ、ジム・モリソンもかくやの禍々しい魔力を放つイギーのテナー/バリトン・ヴォイス(ジョシュとのデュエットも想像以上にハマっている)。ジョシュはアークティック・モンキーズの3rd『ハムバグ』(2009年)をプロデュースして以来、彼らの良き兄貴分となっているが、抜群のタイム感でグルーヴを牽引するマットのドラミングも素晴らしい。リード・シングルの“Gardenia”は、それらすべてが味わえる珠玉のナンバーである。

Iggy Pop – Gardenia | #PostPopDepression

そして、骨太なデザート・ロックに仕上がった “Sunday”において、イギーは《日曜まで彼らの言う通りにして/何を言われても我慢するんだ/満身創痍になるまで/必要なものはすべて手に入れたけど/そのせいで死にそうだ》と円熟味のある歌を披露している。哀愁と諦念をにじませた歌詞は「これが最終章だ」という言葉を裏付けるようにも聴こえてしまうが、いやいや、アンタはまだ大丈夫。新たな相棒を見つけたイギー・ポップの未来は、きっと我々ファンが想像している以上に刺激に満ちたものになるはずだ。

Iggy Pop – Sunday | #PostPopDepression (Visualizer)

RELEASE INFORMATION

ポスト・ポップ・ディプレッション

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