電子音楽、クラシック、ポップなど、多彩なスタイルを取り込んだ怪作『Safe In The Hands Of Love』で注目を集める2018年の最重要アーティストYves Tumor(イヴ・トゥモア)が、12月20日(木)にContact Tokyoにて初来日公演を開催した。

ここでは、本公演のライブレポートをお届けする。

YVES TUMOR “SAFE IN THE HAND OF LOVE” RELEASE TOUR
2018.12.20 THU SHIBUYA CONTACT

テネシー生まれのイヴ・トゥモアが〈WARP〉に移籍後リリースした『Safe In The Hands Of Love』は、いまも多くの謎に包まれている。トゥモアが愛聴していたグランジ的な激しいサウンドもあれば、R&Bやヒップホップの要素も随所で顔を覗かせるというその内容には、いまだハッキリとしたジャンル名が付されていない。さらに、エクスペリメンタル・ミュージックのシーンから出てきたアーティストであるにもかかわらず、チャート・ソングも顔負けのキャッチーな側面を前面に押しだしていたことも、驚きと戸惑いを抱かせるものだった。

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そうしたカオスを象徴するのが、ピッチフォークにアップされた『Safe In The Hands Of Love』評だろう。9.1という高得点をあたえたこのレヴューは、普通に考えたらつながりを見いだせないプルリエントやボーイズ・II・メンをひとつの原稿内で登場させるはめになった。おそらくこうした状況は、「多くの人は私の存在が何なのか困惑してると思う。けどそれでいい」と語るトゥモアにとって本望かもしれない。

このような作品を出した後の来日公演ということもあってか、12月20日のContactには多くの人々が集結した。斜に構えたような業界人やアーティスト、ヴェルサーチェのド派手なマルチプリントTシャツを着こなすオシャレさん、仕事終わりに寄ったのであろうスーツ姿のサラリーマンまで、客層も実に多様だ。

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そこへ登場したトゥモアは、とてもアグレッシヴにステージ上を動きまわる姿が印象的だった。グッチのブルゾンでキメた細身の体をくねらせたかと思えば、ヴィンス・ステイプルズみたいに挑発的なステージングで観客をアジテーションしてみせる。その一方で、「ありがとう」と日本語でお礼を伝えるなど、チャーミングなところも際立った。大量のスモークとフラッシュの中で佇む姿は人外感を醸していたが、近寄りがたい雰囲気を出すことはない。そんなトゥモアと呼応するように、前方の観客は終始踊りつづけ、祝祭的な空気を演出していた。「Noid」のときは〈Sister, mother, brother, father〉を合唱する者がいたりと、さながらアンダーグラウンドなロックンロール・ショーと言える瞬間も多く見られた。

音はバックトラックだが、それでもトゥモアの多彩な音楽性は十分に堪能できた。『Safe In The Hands Of Love』の中域を持ちあげる歌モノ的なプロダクションとは異なり、この日のライヴはノイジーなサウンドも目立つなど、引きだしの多さがうかがえた。それを聴いていると、インダストリアルR&B、エクスペリメンタル・グラム、プリンスとポップ・グループの邂逅など、さまざまなフレーズが頭によぎったが、どれもピンとこない。そのすべてを煮詰めた音楽こそ、トゥモアが鳴らしているものだからだ。ライヴに行けば少しは謎が明かされるかも? と期待していたが、魅惑的なミステリーが深まるだけだった。しかしこれも、〈それでいい〉のだろう。

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Text by 近藤真弥
Photo by Masanori Naruse

RELEASE INFORMATION

Safe In The Hands Of Love

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abel: WARP RECORDS
artist: Yves Tumor
release date: NOW ON SALE

国内盤CD BRC-584 ¥2,400
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子

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TRACKLISTING
01. Faith In Nothing Except In Salvation
02. Economy of Freedom
03. Honesty
04. Noid
05. Licking an Orchid ft James K
06. Lifetime
07. Hope in Suffering (Escaping Oblivion & Overcoming Powerlessness) ft. Oxhy, Puce Mary
08. Recognizing the Enemy
09. All The Love We Have Now
10. Let The Lioness In You Flow Freely
11. Applaud (Bonus Track for Japan)
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