Kana ワーホリ中にすでに活躍してますが、オーストラリアには何年いたんですか? ワーホリの1年だけではなかなか語学もアーティスト活動も充実させるのは難しいですよね?

Anri ワーホリの後に学生ビザを取得して、トータルで3年いました。ワーホリが終わってからもどうしても残りたかったので、そのために農業をやってました。

カメラマン&Kana の、農業(笑)!!!???

Anri (笑)。これ言うとみんなビックリするんですけど、やっぱりオーストラリアもビザが厳しいんですよ。でも農業のバイトを90日以上やったら、もう1年いて良いよってビザがもらえるんです。それで、4ヶ月農業やって、2年間のビザをもらったんです。

Kana ええー! そんなシステムがあるんですね?? 海外に住みたい人は是非(笑)!! でも、今のAnriちゃんのイメージからは全く想像出来ないんですが、具体的にはどうゆうことをやってたんですか??

Anri まず、ゴールドコーストから車で3時間掛かるところに農場があって、そこで、毎朝4時に起きて、暗くなるまでひたすらレタスのピッキングをしてました。ゆっくり進むトラックに、地面に生えてるレタスを穫って、汚い部分を落として、箱詰めしていく作業なんですけど、もうこれがナンバー3に入る過酷労働で(笑)! しかも、日本人だけじゃなくて、ヨーロッパ人も韓国人や台湾人もみんなビザが欲しいからすごい人数いるんですよ。その中で毎日レギュラーで仕事を取らないといつまで経ってもノルマが果たせなくて、ビザがもらえないから、もう毎日死にものぐるいですよね。無農薬だから虫も沢山いるし、カエルにネズミまでいて、顔なんでドロドロだし、もう戦場ですよ。しかも、腰を使う作業だったので1ヶ月経った頃には座骨神経痛になりました(笑)。

Kana そ、壮絶過ぎる……。

Anri でも最終的にはみんなに教える立場のスーパーバイザーにまでなったんですよ。その時点で農業が楽しくなってしまってて、無事にビザをもらえた後に、フェスのブッキングがあったんで久しぶりにメルボルンへ帰ったんですけど、都会過ぎて居心地悪く感じましたからね(笑)。しかも、その時期がチェリーのシーズンだったんですけど、DJやった後に、わざわざピッキングしに帰りましたよね(笑)。

Kana (笑)。

Anri でも、この過酷な農業経験があったからこそ今があると思っています。本当にいろんなことを学べたし、辛いことだらけだったけど、健康的な生活が出来たし、何よりお金を頂くことへの感謝の気持ちを心から知ることが出来ましたよね。

Kana 日本も同じだと思いますけど、農業って人間にとって大切なことの全部がそこにある気がしますよね。根性が腐ってるヤツとか是非とも行かせたいなー(笑)。そこから一度日本へ戻って、ベルリンへ移住するまでそんなに時間が経ってないと思うんですが、何かきっかけがあったんですか?海外のレーベルから声が掛かったとかではなかったんですよね?

Anri いえ、全然、違います。日本ではDJをやりながら、ORIGAMIやAIRやWOMBなどの各パーティーオーガナイザーの方から仕事を頂いて、海外アーティストのアテンドをやっていたんですけど、正直、DJよりそっちの方が人気があったんですよ(笑)でも、やっぱり海外で暮らしたいという思いが消えなかったし、クラブもアーティストもテクノの最高峰であるベルリンで経験を積みたいと思ったんですよね。だから、来た当時は右も左も全く分からない状態でしたよ。

Kana でも、移住してきてから今のポジションを確立するまでに何年も掛かってるわけではないし、そんなアーティストは他にはなかなかいないじゃないですか?

Anri いやいや、最初の2ヶ月は全くギグが入らなかったし、日本みたいに他の仕事があるわけじゃないからお金もないし、焦りと不安ばかりでしたよ!

Kana え、でもたったの2ヶ月ですよね?? 何年いてもギグが取れない人がいるのが現実だと思うし、特にベルリンはすごくシビアじゃないですか?

Anri ああ、でもこれって、みんな勘違いしちゃうんですけど、例えば、”オーストラリアに行けば英語が覚えられる。”って錯覚しちゃうんですよね。海外にいても日本人同士でつるんでいれば英語を使わない環境を選べてしまうじゃないですか。でも、そのまま勉強しなかったら覚えられるわけないんですよね。それと同じで、”ベルリンに行けばDJが出来る”と思っている人が本当に多いんです。

Kana ええ!? みんな本気でそんな甘い考えを思って来てるんですか?? 信じられない……。

Anri 少なくとも私の周りは日本人だけに限らず、外国人DJたちも同じですよね。全員が全員DJって言ってもいいぐらいの街なのに、“チャンスが多い”って錯覚しちゃうんです。確かにチャンスはあるのかもしれないけど、ラッキーを待ってるだけじゃ何も掴めないですよね。

小さなことでもやるかやらないかで、すでに大きな差が出てきます。例えば、最新MIXを作ってSoundCloudにUPすることもそうです。それをたった10人しか聴いてくれなくても、もしかしたらその10人の中にプロモーターがいるかもしれない。それが“チャンス”ってことですよね?自分からそれを掴みにいかないとダメだと思います。

ベルリンで生きる女性たち【DJ編】 anri5

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