宮沢 寛子さんは「BLESS」で働くことになったきっかけはなんだったんですか?

寛子 私はもともと映画の衣裳に興味があり、普通の大学を卒業後に服飾の専門学校に通っていたのですが、その頃から好きだった「BLESS」にインターンとして入って、パリコレを終えてからも声を掛けてもらったので現在もコレクションごとにお手伝いさせてもらっているという状況ですね。

宮沢 なるほどですね。海外に住みながら昔から好きなブランドで働けるってとても刺激的ですね。そんな写真とファッションに精通している2人がベルリンで“KOTO MA”を始めたきっかけはなんだったんですか?

沙也香 ちょうど1年前のワーホリが終わる頃にお互いどうしようか? って話になったんです。私は以前からベルリンで売っている日本のお土産とかものって良いものがないって思ってたんですけど。浮世絵とか花札とかステレオタイプなものしかなくて全然良いと思わなかったんです。

もちろんそういった古典的な物は大切だし、素晴らしい物ですけど、歴史的な価値観とか背景とかではなく、日本のイメージはこうだ! という表面的で偏った伝わり方をしていると思ったんですよね。

でも実際にはもっとセンスが良くて、前衛的だったりコンテンポラリーなものとか素材の良いものとか沢山あるのに何でそれが伝わってないんだろうってすごくもどかしかったんです。日本のアート全般が伝え切れられていない。だったら自分たちが知っているもっと良い日本の文化をベルリンを拠点にヨーロッパに伝えたいと思ったのがきっかけですね。

宮沢 確かに安っぽい素材で作られた物とか安っぽい見せられ方をしてるものって多いですよね。日本=漫画やアニメというイメージの人が多くて所謂“オタク”文化ばかり浸透しちゃってる気がします。

寛子 私も移住して来てからいろんな人に日本のことを聞かれる機会が多くて、こんなにも日本に興味がある人がいるんだって驚いたんです。プロダクトというよりも日本の文化や思想、哲学に対して質問されることが多かったんですけど、その時に自分で納得のいくきちんとした説明が出来なかったんですよね。語学面の問題もありましたが、ものすごくもどかしい思いをしたんです。

そこから日本人の口からちゃんとリアルなものを伝えたいという責任感と同時に共有欲的なものが生まれて、そういった思いからKOTO MAを始めました。KOTO MAは私たち以外にアートディレクターの中野とデザイナーの福田の4人で始めたプロジェクトなんです。彼らは普段は東京にいてウェブの構成やデザインの製作を担当していて、私たちがベルリンの現場で動くといったスタイルになってます。

宮沢 その第一弾が私も伺わせてもらった木工作家のMasashi Ifujiさん(以下、井藤さん)のエキシビションだったんですね。プロジェクトの第一弾ってすごく重要になると思うんですけど、どういった経緯で井藤さんのエキシビションをやることになったんですか?

寛子 中野さんが井藤さんのファンだったという経緯もありますが、ちょうど1年前に、ベルリンでの第一弾に向けて作家さんを探しに展示会をいくつか回っていたんです。そこで井藤さんにもお会いしてKOTO MAのプロジェクトをお話した際に今後ヨーロッパ展開も考えているということだったのでアプローチさせてもらいました。

沙也香 まず、作品自体がすごくステキだし、ドイツは木に対して思い入れのある国民性だと思ったので興味を持つ人が多そうだなと思った経緯もありますね。

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KOTO MA第一弾となったエキシビジョン”IFUJI meets SHIORI” photo by KOTO MA
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photo byTomohiro Hanada
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初日に行われた作家・井藤さんのトークショーの様子 photo byTomohiro Hanada

宮沢 1点1点絶妙な色の違いとか上品さとか部屋に飾っておきたいぐらい使うのが勿体無い美しい作品ばかりでした。それに、会場が(日本食レストラン)「Shiori」というのもすごく作品とマッチしてたと思ったんですが、そこはどういった経緯があったんですか?

沙也香 エキシビションの会場探しをしていた時に「Shiori」へ食事をしに行って、「ここだ!!」って思ったんです。作品もそうですが、井藤さんご自身の上品なイメージにもピッタリだなと。それで、作品の展示販売とコース料理の器にも作品を使用してお客様に実体験してもらうというインスタレーションにしました。

寛子 「Shiori」はオーナーでシェフの荒井史織さんのおじいさんの影響から日本の伝統的な茶懐石のスタイルを徹底しているんです。1日10席のみの完全予約制でおまかせコースのみ、19時30分きっかりに予約のお客さん全員で一斉に食事をスタートするんです。シオリさんご自身もベルリンで日本の文化を広げたいという考えを持っていらっしゃる方なので、井藤さんの作品や作り手と使い手の出会いをつなぎ、本質的な体験を演出したいという私たちのコンセプトにも共感して頂いて開催することが出来たんです。

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“IFUJI meets SHIORI” photo byKyoko Takemura
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“IFUJI meets SHIORI” photo byKyoko Takemura

宮沢 えー、行ってみたい!! ベルリンでそんなお店他にないですよね??噂には前々から聞いてましたが、普段行くにはちょっと自分には敷居が高いなと思っていて何かスペシャルな時に行きたいなと(笑)。今回が記念すべき初エキシビションとなったわけですけど、実際にやってみてどうでしたか?

沙也香 そうですね。「Shiori」はもともと感度が高い人が常連のお客様なので食事の最中に窓際の展示を見に行ってくれたり、関心を持ってくれる方が多かったです。一対一の体験をしてもらえる場所としてこれほど最適な場所はなかったと思っています。

宮沢 確かにストリートやアンダーグラウンドが人気のベルリンではなかなか見れない和のエレガントさを感じれる演出でとても心地良かったです。すでに第二弾となるエキシビジョン<KAZUMI TAKIGAWA ×  ANNE SCHWALBE>も開催とかなり勢力的に活動されてますが、毎回違う会場で開催するんですよね?大変そうですが、どうやって探してるんですか?

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KAZUMI TAKIGAWA×ANNE SCHWALBEインタビュー

Interview with Kazumi and Anne”The gift between Tokyo and Berlin” vol.1

Interview with Kazumi and Anne”The gift between Tokyo and Berlin” vol.2

Interview with Kazumi and Anne”The gift between Tokyo and Berlin” vol.3