前回のコラムで紹介した通り、街は住みやすくなる一方でビザが厳しくなるベルリン。しかし、様々な分野でセンスと才能を発揮する若き日本人の姿が目立ってきているのも事実である。

日本で身に付けたスキルや感覚を活かしながらこの街だからこそ出来るおもしろいアウトプットの仕方を見せてくれる人々と出会う機会が多くなった。

そんな今回は日本でファッション、写真、アートの世界に身を置き、現在はベルリンで始動したばかりのアートプロジェクトを手掛ける女性二人にスポットを当ててインタビューを行った。

ベルリンで生きる女性たち」第4弾となります。是非最後までご覧ください。

Interview: 山田沙也香×本柳寛子
(インタビュアー:宮沢香奈)

東京のカルチャー発信地として神宮前のシンボル的「VACANT」。そこで出会った山田沙也香さんと本柳寛子さんは偶然にも同じ時期にベルリンへ移住し、再会を果たした後、アートプロジェクト“KOTO MA”を始動させた。

KOTO MAは日本人作家にフォーカスしたエキシビションをベルリンを拠点にヨーロッパで開催し、日本のカルチャーを浸透させることを目的としている。

沙也香さんは東京での経験を活かし、ベルリンのフォトギャラリー「Only Photography」に勤務しながら様々なエキシビションに携わった後に独立、もともと衣装スタイリストだった寛子さんはベルリンとパリに拠点を持つブランド「BLESS」でインターンシップとして働き、現在もコレクションシーズンのフォローをしながら自身のプロジェクトを運営している。そんな2人の活動、そして、ベルリンでの生活についてリアルな声を聞いた。

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(左)本柳寛子さん、(右)山田沙也香さん
photo by::Ryota Abe

インタビュアー宮沢香奈(以下、宮沢) VACANT時代に2人でベルリンでアートプロジェクトをやろうってなったわけじゃなくて偶然だったんですよね?

山田沙也香(以下、沙也香) そうなんですよ。本当に偶然でした。私は東京で働いていた時からずっといつかヨーロッパでアートの仕事をやりたいと思っていたので、ワーホリ制度を利用してベルリンへの移住を決めたんですが、寛子ちゃんが移住することは全然知らなくて。日本を発つ1週間ぐらい前になって同僚から「そう言えば、2階の寛子ちゃんもベルリンに移住するらしいよ」って聞いたんです。

本柳寛子(以下、寛子) 私も人伝てに聞きました! 「そう言えば1階の沙也香ちゃんも移住するらしいよ」って(笑)。

宮沢 なんか総務部の〇〇さんとか人事部の△△さんみたいですね(笑)。

沙也香&寛子 確かに(笑)。

宮沢 寛子さんもアートがやりたくてベルリンへ移住したんですか?

寛子 そうですね。日本ではフリーランスで衣装のスタイリストをやってたんですけど、同時にVACANTでアートやカルチャーイベントの企画・運営をやってました。そこで1年半ぐらい経験を積んでから、沙也香ちゃんと同じようにワーホリでベルリンに来ました。

宮沢 沙也香さんはベルリンでもフォトギャラリーに勤務してましたよね?

沙也香 そうですね。日本でもフォトギャラリーで働いていたので、その経験が活かせるようにベルリンのフォトギャラリー「Only Photography」で働いてました。とにかくヨーロッパのアートシーンが知りたかったんですよね。

宮沢 実際にベルリンのアートシーンはどうですか? 日本との違いとかもあると思うんですが。

沙也香 写真に関して言えばコンテンポラリーに近いですね。写真を撮る時にまずコンセプトから入るんですが、すでにある物や人を撮るだけでなくて被写体から作っちゃうんです。コンセプトがハッキリしていて、その世界観を自ら作ってしまうからもうフォトグラファーという領域を越えて現代アートになってるんですよね。日本はその全く逆で、撮った後にテーマを決めることが多いから特殊なんだって思いました。

宮沢 海外の、というかベルリンのフォトグラファーに関してですが、レタッチがうまい気がするんですよね。明らかに加工してるんだけど、その見せ方が上手いというか。でも写真自体のクオリティーはどうなんだろう? って。

沙也香 写真を撮るということに関して言えば、日本人のフォトグラファーの方がクオリティーが高いと思います。ただ、ベルリンはさっき宮沢さんが言った通り、見せ方が上手いんですよ。例えば作品自体はそこまでクオリティーが高くなくても営業トークがものすごくうまいとか(笑)。だからそれで売れちゃったりもします。

宮沢  自ら作るし、撮るし、売るしってすごいな(笑)。でも確かに制作だけでなくてPRも営業も自分で出来たらビジネスにおいては強みになりますよね。ベルリンや他都市で出会う外国人クリエイターやアーティストはみんな自分にものすごく自信を持ってるし、自己アピールも上手いですもんね。職人気質で腕は確かだけど口下手でシャイな性格の多い日本人にはない部分ですよね。

沙也香 最初はそれがカルチャーショックでしたし、日本より弱肉強食の世界なんだと実感しました。

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photo by:Ryota Abe