3.ヒップホップを世界に知らしめた作品であるということ

’79年にリリースされたシュガーヒル・ギャング“Rapper’s Delight”などによってラップ・ミュージック自体は徐々に世間に認識されていたものの、NYのごく一部でしか観ることの出来なかったグラフィティやブレイクダンス、DJによるスクラッチなどを“ヒップホップ”という一つの括りで世に紹介したのは、『ワイルド・スタイル』の最大の功績である。驚くことにこの作品が最初に劇場公開されたのが日本であり、’83年の上映時にはプロモーションのために監督と共に34名の出演者が来日してイベントやテレビ出演を果たし、日本のヒップホップシーンを作り出すきっかけにもなっている。日本での上映後、アメリカ国内でも上映され、インディ作品ながらも大きな反響を呼び、さらに世界中へヒップホップを広げていくこととなった。その流れが今現在も続いているのは言うまでもなく、だからこそヒップホップに少しでも影響を受けた人であれば絶対に見逃すことは出来ない作品なのだ。

(text by Kiwamu Omae)

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