——押し花は花にそれほど詳しくない人にとっては、パッとイメージが付きづらいものでもあるかと思います。それこそ本に挟んである“しおり”のイメージといいますか。

それはあると思います。僕の実家は花の仲卸だったし、また、東さんのところでも花の仕入れをしていました。それで市場とかに行くと、年単位でたくさんの植物の品種がなくなっていくんですね。それ自体が良い悪いというわけではないんですが、花で作品をつくるのであれば何らかの形で残せたらいいなと。それにあたって押し花は最適なツールなのではないかと、やっていくうちに思うようになりました。あと先ほど仰ったように、押し花はしおりのイメージが強く、昔からある手法なのに認知範囲が狭い。それをもっと表現として広がりを持たせて提示できるんじゃないかと思いました。

——実際に花の業界で押し花を使って表現している方はいるんですか?

いるにはいるんですが、押し花を使って絵にする人が多いですね。

——それとは別の方法で表現しようということだと思うんですが、独立されてからの活動もスピーディーですよね。2、3ヵ月単位でいろいろな場所でイベントをされていて。

やっぱりいろいろなところで活動することで、興味を持っていただける人も増えますし、それによって少しずつお話もいただけるようになりました。僕の中では急がずに時間をかけてやっていこうと思っています。

【インタビュー】朽ちるさまを“押し花”で表現——フラワーアーティスト・相壁琢人の「無彩色の痛点」 interview_ahiaikabe_IMG_0066c-700x467

——活動するに当たってフラワーアートと同時に、「自然採取」や「保存」といったテーマも掲げていますが、それは最初から考えていましたか?

フラワーアートとは別に、自然採取や保存っていう部分は、実は一番大事にしていきたいと考えています。ただ普通に咲いている花を切って、押し花にしますだけだと、一般の人からしたらなかなかイメージが沸かないと思うんですよね。伝わりづらいというか。

——確かに花を展示するに当たって、「自然にあるものが一番美しい」みたいな固定観念もどこかにあると思います。そこで保存というものがフラワーアートにも重要になってくるのかなと。

僕自身も自然に咲いている植物の姿が一番美しいという想いはあって。なので、それを人の手で切るんだったら、それと同等の魅力を見せなければいけないというのは強く感じています。美しい瞬間だけを掻い摘むのではなく。

——2015年以降に花屋として行ったイベントはどのような内容だったのですか?

そのころのものは純粋にワークショップという形で、花のアレンジメントを教えて、欲しい人がいたら販売して……という感じでした。ただそれだと花屋の延長線上でしかなかったので、伝えたい部分が矛盾してしまい伝えきれない葛藤もあって。

——それを経て、2016年からは移動型の展示<デラべっぴん、おちてたよ>も始めるようになったと。あれは街の中での展示で、最初少しの違和感は感じつつも、花と街が共存している雰囲気が斬新でした。

展示自体は最初はあまり興味を持たれなくても、そういうのを街を変えて展示していると、それぞれで違った反応が出てきて面白かったです。

——相壁さんの活動において、“花と何か”で表現する、というのがひとつあるのかなと思ったのですが。

そうですね。最初に話したようにバンドをやっていたので、音楽はすごく重視しています。やっぱり花単体だけの表現になってしまうと、すごく限定された範囲の人にしか伝わらなかったりするので、それよりはいろいろなジャンルの人と一緒に、お互いの価値を高めつつ、表現していきたいというのはあります。

——移動型の展示以前には、2016年3月に渋谷WWWで初の個展<Paradise of Shadow>、7月に渋谷ヒカリエで<渇花>と、活動規模も大きくなっていきますね。

やっぱり花屋とかギャラリーだけではなくて、いろいろな場所でたくさんの人に見てもらいたいっていうのはあります。<渇花>はクラウドファンディングをしたんですが……それはそれで少し大変でしたね。活動の本質が少し胡散臭くなってしまう可能性があるので、そこのバランスは気を遣いました。

渇花 Jul.18-Jul.5.2016 Shibuya Hikarie8/CUBE

——ひとつひとつリターンを決めるのも大変ですよね。そこで新しい発見はありましたか?

花を扱っているので、やっぱり「カワイイ」とか「キレイ」と思ってくれる人が見てくれるんですが、それ以外の花の魅力にも目を向けてくれる人も徐々に来てくださったので、少しずつですが伝えたい部分が広がってきたのかなと感じています。