ARDBECKのファーストEP『BLUE』は、硬質で都会的なムードのなかに、「いつかこんな音楽をやってみたかった」というようなピュアな初期衝動が息づいている。お互い80KIDZのサポートメンバーという立場で知り合った堀正輝(Hori)と須藤優(Yu)の二人は、ダンスとロックという異なる音楽性を巧みにミックスさせながら、誰も鳴らしていない音を鳴らそうとしている。とはいえ、ロックの要素を感じさせるダンスミュージックなら他にも腐るほどある。何が違うのか。彼らの音楽にはサウンド自体が目的化する胡散臭さが欠片もないのだ。たとえば、冒頭曲の“AWAKE”では、アスファルトの道路をひた走っているうちに、いつの間にか何万という大衆の前に放り出されるようなイメージを思い浮かべることができる。その音がどんなイメージを喚起するのか、彼らはそこに特に意識的なのだと思う。

今回は、すでに音楽シーンのなかでプロのミュージシャンとして活躍していた二人が新たにARDBECKを組むことになったきっかけと、その音楽についてインタビューを敢行。インタビュー当日、とにかく相性ぴったりで仲の良さそうな二人の雰囲気が印象的で、彼らの物語が今後どのような展開を見せるかが心底楽しみになった。あとは、80KIDZのメンバーたちが「依存している」と話すほど圧巻の生演奏をぜひ目撃してみたい。

Interview:ARDBECK
[堀正輝(Hori/Dr,Pr)、須藤優(Yu/Vo,Ba,Gt,Pr)]

――まずはお二人の簡単な自己紹介をお願いします。

堀正輝(以下、Hori) 僕は元々北海道でバンドをやっていて、80KIDZには彼らが北海道に来たときに出会って、メンバーが2人になるタイミングでライブセットに呼ばれるようになったんです。そのあと1年か2年後に須藤が入ってきたんですが、当時僕はまだ札幌を拠点に活動をしていました。そのときから須藤とはバンドをやりたいという話をしていて。ベースとドラムという構成も珍しいから面白いかなと。

須藤優(以下、Yu) 僕も別のバンドでベースをやっていて、5年前にそのバンドが一旦ライブを休止して、その頃から色んな人のサポートを始めました。そのひとつが80KIDZだったんです。しばらくサポートばっかりやっていたので、自分のバンドもやりたいよね、と思っていて。堀くんはクラブミュージックが好きで、僕はバンドサウンドが好きだったんで、その違いも逆に活かせるんじゃないかと。

Hori 僕はケミカル・ブラザーズやアンクルが好きだったんですけど、自分の好きな音楽をちゃんとしたバンドでやったことがなかったんです。そういう意味でお互いのやりたいことが重なったんですが、如何せんお互いの趣味趣向が両極端で、飲んでいても意見が食い違う(笑)。そもそも、お互いに大事にしている部分が違うんで。

――具体的にいうと?

Hori 自分のなかで大事にしている、音楽を作るうえでのプロセスがそもそも違う。ただ、二人ともエモい音楽が好きだとか、終着点は意外に一緒だったりするんです。

――それを感じたきっかけは何だったんですか?

Hori とあるライブでギターの音が出ないという機材トラブルがあって、間を埋めるためにベースとドラムだけでセッションしていたんですよ。そのときに弾いたベースフレーズがずっと頭に残っていて、「それだけ後で送ってくれない?」って須藤にお願いしたことがきっかけで、“LOST”という曲の元ができたんです。ああいう感じで曲ができるのは面白いと思ったし、須藤は自分が知らないことをやっていたので、とりあえず乗っかってみた。

Yu 自分が作った楽曲を堀くんに送ると、予想していなかった形で返ってくるので、それが面白いですね。

――お互いのプレイを見てもっとも印象的だったところを教えてください。

Yu 堀くんはマシン(笑)。リズムがスクエアなんですよ。とにかく同期に特化している。

Hori 須藤のベースは吸い付いてくる感じがあって、ゴムみたい。僕は家で打ち込みばっかりやっていたんで、今までリズム隊っていう概念がなかった。いまは生音の良さを学んでいる感じですね。

Yu 堀くんがきっちり構築したものをおれが揺らすっていうのが気持ち良いんです。あと、堀くんは曲も作る人なんで、それは大きいと思いますよ。ぜんぜん違う。

Hori それ、この前も言っていたよね。もちろん、楽器しかやっていない人の良さもあると思うんですが、普段曲を作っていると自分がひとつの音でも選択した意味が出てくるから。

Yu 最初からちゃんと終着点が見えていて、だからこそ細部が構成されていく感覚があります。

【インタビュー】80KIDZのメンバーたちが“依存している” ARDBECK、デビューEPのサウンドを語る inteview150318_ardbeck_2

『BLUE』ジャケット

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