ーーまた、あなたたちはフレーミング・リップスともツアーを共にしましたね。ウェイン・コインがネットで見つけて声をかけてくれたという話もありますが、実現したきっかけはどんなものだったのでしょう? また、このツアーはどんな経験になりましたか。

実は、そのHOTT MTを通して実現したんだ。あ、そうでもないか。もう一つあって、フィーヴァー・ザ・ゴーストのリズムセクション担当が前モーガン・デルトのバンドでもプレイしていたんだけど……ちなみにモーガン・デルトもすごく良いよ(笑)。で、彼がフレーミング・リップスのオープニングを務めたことがあってね。だから、それで僕たちのことを知ったのと、HOTT MTのメンバーもそのバンドでプレイしていたから、HOTT MTを通して僕たちのことを聞いたっていう二つの経路があるんだ。複雑だけど(笑)、とにかくその流れで彼らと話すことになって、ある時いきなりウェインが「“Sgt. Pepper’s”をカバーしてくれよ!」ってメールしてきたんだよ。だから、「……いいよ。」って返事した(笑)。それがきっかけ。夢のシナリオみたいだった。彼らと同じステージで演奏するなんて、間違いなく人生のハイライトだね(笑)。

ーーでは、フレーミング・リップスの作品で好きな作品を挙げるなら?
 
僕は彼らの最近の作品が好きなんだ。彼らって、作品を出す度にどんどん良くなっていっていると思う。僕は他の人たちよりも遅く彼らの音楽を聴き始めたから、最初にハマったのは『エンブリオニック』のレコードだった。そこから昔の作品に後戻りしていくような感じで彼らの音楽を聴いていったんだ。実際に会ってみて、彼らの素晴らしさを改めて知ったよ。彼らのライブを見たのは、一緒にツアーした時が初めてだったんだ。『ザ・テラー』も素晴らしいレコードだよね。

ーー彼らのどんなところに魅力を感じますか?

彼らは本当に色々な方向に向かっているバンドだと思う。だからこそ、こんなに長く活動出来るんだと思うし、素晴らしい音楽を作り続けることが出来ているんじゃないかな。まさにバンドの理想型だよね。こんなに長く業界で活躍できているわけだから。

ーー4曲目“Peace Crimes”にはフレーミング・リップスのスティーヴンが参加しています。これはどんなきっかけで? 彼との制作の様子や、彼がこの曲でどんな貢献をしてくれたのかを教えてもらえると嬉しいです。

“Sun Moth”にも参加してくれているんだ。ツアーの時、スティーヴンがバックステージで軽い感じで、「何かやるんだったら、俺も協力するよ」って言ったから、その言葉に乗らせてもらったんだ(笑)。距離があったからファイルを送り合って作業したんだけど、すごくスムーズだったよ。“Sun Moth”の方が彼が関わっている部分が多い。特にギターの部分でね。だから“Sun Moth”の話をすると、アルバムの他のトラックに比べて、このトラックはすごくまとまりがある曲に仕上がっているんだ。他のトラックはもっと色々な要素が散りばめられた感じだけど、“Sun Moth”の場合は、スティーヴンのおかげでもっとシンプルで軸のある作品に仕上がったと思う。

ーーそして今回デビュー・アルバム『ジルコニウム・メコニウム』が完成しましたが、ユニークな遊び心や音楽的な冒険がものすごい情報量で詰め込まれた作品になっていますね。このアルバムについては、いつ頃から作り始めていったんですか。

僕の頭の中はもう次のレコードのことでいっぱいだから、思い出せないな(笑)。とにかく、デビュー・アルバムはずーっと前から作り始めてて、やっとリリースされるって感じなんだ。2年くらい作業してたかな。もちろん、リスナーにとっては新しい音として楽しんで欲しいけどね。

ーー次のアルバムを作るのに充分なくらいの曲数がもう出来上がっているんですか?

まだスタジオに入ってレコーディングしたりはしていないけど、曲数は充分にあるよ。それは確実(笑)レコードがリリースされるまでの何もしない期間ってウズウズしてしまうんだ。次のレコードが出るまでに長く待つのって好きじゃないから、出来るだけ早く次ぎの作品を出したいんだよね。シングルでもいいし、EPでもいいし、数ヶ月おきくらいのペースでとにかく何かをリリースしていたい。次の何かへと常に前進していたいんだ。

ーーまだクレジットがこちらに到着していない状態なので、制作した場所や関わってくれたプロデューサーなどがいれば教えてもらえると嬉しいです。

場所はロサンゼルスにあるセージ・アンド・サウンドっていうスタジオ。クリス・ステッフェンっていうエンジニアがすごく活躍してくれて、ミックスから何から、彼の豊富な知識で僕たちを助けてくれたんだ。彼を含めた何人かでそのスタジオを経営しているんだけど、そのうちの一人が僕の父親で、彼も色々と助けてくれた。彼はセッション・ドラマーだから、タイミングの計り方とか、時間の使い方とか、そういうのを教えてくれたんだ。プロデュースは自分たちでやったよ。

ーーその際、何か考えていたコンセプトや、こういう方向性の作品にしようと思っていたことはあったんですか?

コンセプトは後からついてきた感じなんだけど……すごく抽象的なんだ(笑)。

ーーアルバム・タイトルを『ジルコニウム・メコニウム』にした理由を教えてください。

「ジルコニウム」は結晶のようなもので、結晶って特定の側面がないし、すごくスピリチュアルな感じがしたんだ。「メコニウム」は、母親の身体の中にあるものだけで出来た便(胎便)のことなんだけど(笑)、この二つの言葉で、このレコードが世に出るまでのプロセスを表現出来るなと思って(笑)。

ーー全体の曲順については、何か意識したことはあったのでしょうか?

アルバムをよりエキサイティングにするために色々考えたよ。僕って考えが変わりやすいから、曲順は結構変えてたんだよね。ちょっと手こずったけど、最終的にはしっくりくる流れが出来上がったんだ。全ての曲がアルバムの中で同じくらいの役割を果たせるような順になったと思う。

ーー制作中、何か完成までのターニング・ポイントになったような出来事などはありましたか? もしくは、手ごたえを感じた瞬間や、アルバムの完成形が見えてきた瞬間などがあれば教えてください。

EPの時もそうだったけど、マスタリングの時かな。EPの時と同じくボブ・ルドウィグにやってもらったんだけど、そのプロセスを見ているのは驚きの連続だし、本当に勉強になる。作品がひとつになっていって、本物のレコードになったと実感できたんだ。

ーーでは、本作の制作中、音楽的な話でもそうではない話でもいいのですが、最も思い出深かった出来事は?

うーん……どれか一つをピックアップするって難しいな(笑)。雰囲気そのものが印象的だから。敢えていうなら、犬がいたってことかな(笑)。あれはよかった。

ーーでは、曲について聞かせて下さい。9曲目“1518”に関してですが、この曲であなたのメイン・ヴォーカルと掛け合いのような形で登場する声は誰のものなのでしょう? もしくは他の曲のように、あなたの声のピッチを変えたものですか。

そう。それは僕の声だよ。ピッチを変えて、オーバーダヴしたんだ。

ーーでは、いくつか楽曲について具体的に訊かせてください。まず冒頭の“Metempsychosis”ですが、1曲目から「霊魂の再生,輪廻(りんね)」がタイトルになっているのは非常に面白いですね。また、これはアルバム全体の内容にもかかわることだと思いますか?

このストーリーは、現実の世界に生まれることに使われるエナジーを再び見つめ直して、想像しているんだ。生まれるってこと自体がいかに圧倒的かということ。そこから現実に融合していくプロセスの始まりがこの曲なんだ。つまり、全ての始まりってことだね。

ーー5曲目“Surf’s UP!…Nevermind”のタイトルはロック/ポップ・リスナーであれば非常にニヤリとさせられると思いますが、この曲に込めたアイディアを教えてください。

もちろん大好きなレコードではあるけど、直接繋がりがあるわけではないよ(笑)。曲の最初の方がサーフィンっぽいサウンドにインスパイアされているからそのタイトルにしたんだ。で、“Nevermind”の部分は、そこからどんどんサウンドが変わっていくから、それを意味してつけたんだ(笑)。

ーー6曲目“Long Tall Stranger”の冒頭のセリフは、どこから取ったものなんですか? また、この曲ではどんなことを意識しましたか。

あれは、人間が話しているセリフじゃないんだ。あれはコンピューターで作られた声で、秘密のプログラムを使って出来てるんだよ(笑)。すごく楽しかった。ビデオを作る時なんかも、プログラムされた声を使ってクレイジーなことを言わせたりするんだ(笑)。この曲は、多分レコードの中でも一番古い曲だと思う。この曲のサウンドってすごく変わってるんだよね。うまく説明出来ないけど、そこが特徴だと思う(笑)。

ーーまた、ユニークなアートワークについても教えてもらえると嬉しいです。これは毎回どんな風に考えていくのでしょう? 何か大切にしている世界観がある? また、今回のアルバムのものについても、思い描いていたイメージのようなものがあったのですか。

今回のアルバムのアートワークに関しては、人の宇宙的な経験談を沢山を聞いたんだ。幽体離脱とか、宇宙人の話しとか。そういうのって、すごく面白いんだよね。それを基にデザインを考えたんだ。アルバムのデザインの基になっているのは、シャコ目っていう生き物。シャコ目知ってる? 虹色で、すごくキラキラしていて、殻があって、本当に綺麗なんだ。綺麗で触りたくなるんだけど、攻撃してくるからやめといたほうがいいよ(笑)。威嚇の仕方がすごいんだ。すごく綺麗な表面の下にダークな面があるっていう部分に惹かれた。その矛盾が気に入ったんだよね。変な生き物とかそういうの好きで、そこから世界を広げていくんだ。“1518”のビデオは、アルバムのアートワークの世界観をより広げたものだよ。

あの日本人から影響?!注目のサイケポップバンドにインタビュー interview151016_ftg_2

『ジルコニウム・メコニウム』ジャケット

ーーいよいよバンドとしてのデビュー・アルバムが世に出るわけですが、改めて振り返ってみて、今回のアルバムはあなたたちにとってどんな作品になったと思っていますか。

グループを結成した時の自分たちのスナップショット。多くを学んだ経験とか、全てが詰まってる。このアルバムを土台に、これからどんどん他のことにも挑戦していきたいし、このアルバムを出すことで僕たちが持つその抽象的なイメージを提示できたらいいな。

ーー最後にこれからのことについても訊かせてください。フィーヴァー・ザ・ゴーストはどんなバンドになっていきたいと思っていますか。目標のようなもの、もしくは「こんな存在になれたら嬉しい」というアーティストの名前など何でもいいので、教えてもらえると嬉しいです。

さっきも話したように、結果的に僕たちは「バンド」として認識されたくないんだ。例えば、サーカスを見に行って会場に入ると、壁、装飾、そこにいる人……全てがその雰囲気を作っているよね? それが僕たちが目指しているもの。ライブの時も、自分たちのテーマパークみたいなものを作れたら嬉しい(笑)。音楽を基にしながらも、そういったものが魅力のグループにしていきたいんだ。新しいフォームで音楽を演奏することで、それがもっとエキサイティングになるんじゃないかな。

ーーすごく面白そうですね。日本でも実現して下さいね(笑)。

それが僕たちのゴールさ(笑)。まだ一回もいったことがないから、日本には是非行ってみたいんだ。

ーー近いうちに来日して下さいね。今日はありがとうございました!

ありがとう!

Fever The Ghost “Vervain (Dreams Of An Old Wooden Cage)” – Live @ Sage and Sound

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