––––同じ「ダブ」という共通項を持ちながらも、TAMTAMは歌モノ、あら恋はインストと全く異なるアプローチなんですよね。

池永 やっぱり感覚が違うんですよ、僕らの世代と。TAMTAMはいわゆるニュージェネレーションだと思う。アウトプットの仕方が今っぽいというか、いろんな音楽を並列に聴けている世代で豊富な情報があるから、いわゆるダブとかレゲエの人らと比べて、良い意味でスタンスが軽くて、それが新しいと思うんです。分け隔てない感じがする。

junet 世代的に全部が並列にあったという事実はありますね。レディオヘッドもダブステップも揃っていましたし、ビートルズもJ-POPも横一線に並んでいました。だから、ある意味、先入観がない状態なのかもしれないです。「あの時に観たライブが!」という体験がなくて、ライブを観れないまま解散しているバンドがいっぱいありますし。

kuro ほとんど後追いだよね。男の子たちは何年代のアルバムで〜とかを調べたりしますけど、私はなんとなく音の感じから「80年代かな。90年代かな」とかはあるものの、ちゃんと調べないと分からないくらいごっちゃに聴いていると思います。そういう意味では、昔のダブの人たちは敢えて狭めている感じなのかもしれませんね。狭めることによって深くに潜るような更新の仕方だと思うんですけど、そこはちょっと違うなと思っていて。それこそあら恋を観て、こんなに暴力的なステッパーズがあっていいんだとか衝撃を受けました。TAMTAMがステッパーズの曲をやる大きな契機だったりしましたし。だから、個人的にはあら恋もいわゆるダブの人たちとは違うというか。

【ダブバンド対談】TAMTAM×池永正二(あら恋)、お互いの出会いや共通項を語る music140421_tamtam_0006-1

【ダブバンド対談】TAMTAM×池永正二(あら恋)、お互いの出会いや共通項を語る music140421_tamtam_0101-1

––––個人的に、あら恋はどこにも属さない音楽というイメージがありますね。

池永 うん、僕は周りと違うことがしたかったので。

––––ダブとかダブステップは、カテゴライズするためのアイコンだと思うんです。ジャンルとして紹介するための便利な記号という側面が大きいような気がしていて。

池永 ウチもTAMTAMもそうやと思うけど、カテゴライズされへん音楽というか。。

junet あら恋はあら恋ですよね。好きな音楽もイケショー(池永)さんと話していると納得するんですよ。ストーンズ・ローゼズとかプライマル・スクリームとか。

池永 フォスター・ザ・ピープルとかボンベイ・バイシクル・クラブとかは常に自分たちの音楽を更新しているでしょう。ああいう存在になりたい。

kuro ああ、いいですね。

junet 僕らも結果的にそうなれていればいいんですけれど、あまりそこまで考えていなくて。あら恋には確実に影響されているんですよね。シーケンスを入れていいんだとか。

kuro プライマル・スクリームを聴いているのと同じ感覚ですね。

池永 ありがとうございます。

junet こうやって話せるようになったけれど、ファンっていう気持ちは変わらないですね。会う度にイケショーさんに言うんです、「好きで好きでしょうがない」と(笑)。

kuro 私は池永さんが「歌えるんだったら歌いたい」って言っていたのをよく覚えていて。当時の私はあまり歌詞を書きたくないなと思っていた時期で、そのときに「僕だって歌えるもんだったら歌いたいですもん」って言っていたんですよ。

池永 歌モノは好きですし、もう常々歌いたいと思っていて。でも、ものすごく下手なんですよ(笑)。

kuro インストをやっていながらそう思うってことは、歌モノに何かしら独特な意味があるんだろうなということを考えました。それまでは、歌も楽器の一部みたいな考え方だったので、何を言ってもいいし言わなくてもいい、全部ラララでもいいんじゃないかっていう不真面目な感じだったんです(笑)。

フォスター・ザ・ピープル – “Coming of Age”

––––日本語詞、英詞にするかのジャッジってデリケートだと思うんです。TAMTAMは基本的に日本語詞ですよね。

kuro 一時期は英語でしたけど、それも言葉はどうでもいいっていう意識から来るものであって。誰かに何かメッセージを投げかけたくなかったので、池永さんの一言はそこをブレイクスルーできた名言なんですよね(笑)。「私はせっかく歌ってるんだから、頑張ろう」って。一般的には歌とメロディーと詞を合わせて聴く人が多いと思いますし、そういう当たり前のことに一度立ち返ったというか。「歌モノバンドとして成熟してあれ」というのは、今のTAMTAMにとって一つのポイントにしていますね。

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