福岡を発つ前日。前日という出だしには、余りにも平凡な日だった。この日はジュンとアメリカに備えて買い物へ行った。家に帰って飯を食べ、自分で作った不味いコーヒー飲みながら、自分は来たる4月のレコーディングをフッと思い出して焦っていた。「これマジで、アメリカどころじゃねえぞ」歌メロも歌詞も作らないと。

アメリカでも、空いてる時間に作るかと開き治って、その日せっせと荷造りをした。持って行ったものはシンプルで、僕たちの物販、自分の機材、着替え、身周り品のみ。これが想像を絶する重さで、空港に行くのも正直億劫。たまたま友達が持ってたバカでかいスーツケースに全ての物販と、自分の機材を入れてパンパンだった。残りは自分が持って行った登山用のリュックに入れた、これもまた重い。

とりあえずなんとかして、福岡空港に着いた。メンバーは揃って来ていた。あっ、俺ら本当にアメリカに行くのか。ここで初めて実感が湧いた。俺USAに行けるんかー!!??

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1日目

飛行機でアメリカに出発!空港での物語

羽田から乗り継いだアメリカン航空に入った瞬間。匂いが違う。キツイけど、邪魔しないデオドラントの匂いが充満していた。半分以上は多分アメリカ人。飛行機はとりあえず果てしなく長い。

暇を潰すも、やる事は限られた。映画はあるけど、こんな小さいスクリーンで観たい映画も限られるので、あんまり観ていない。エマ・ストーンとスティーブ・カレル主演のコメディ・伝記・テニス映画を観たぐらい。タイトルは忘れたけど、まあまあ面白かった。というかエマ・ストーンが丸メガネかけてテニスするから3割増しで可愛かった。

それよりも、機内の音楽のセレクションが面白くて、そして凄く大雑把。人気作品はあんまり無くて、ブックオフの500円コーナーに入ってるようなセレクションだった。ディグする感覚で聞いたが、これは面白かった。個人的には、『Listen to the Ahmad Jamal Quintet』という61年のジャズアルバムが大当たり。これを聴きながら、どうにか寝た。そしていつのまにか着いてしまった。遂にアメリカ本土初上陸。

着いた時は昼間だった。LA国際空港で、とりあえずみんなでタバコタイム。自動ドアから出た瞬間、車両のバトルが勃発していて、クラクションの嵐だった。流石だと思った。とりあえずタバコ吸いながら人間観察していたら、スケボーで颯爽と人を避けながら、涼しい顔で、そのまま空港に入って出社した黒人の青年を見た。これがLAか、カッコいい。

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ここで、TENDOUJIのアサノ氏に偶然遭遇。他のメンバーとはぐれたらしい。僕らと同じく、長いフライトで顔が辛そうだった。前福岡で対バンして仲良くなったから、テキサスで遊ぶ約束をして、お互いにライブ頑張ろうと挨拶して、僕らは乗り継ぐまでの5時間の合間に、飯を食いに向かった。

20〜30分見回り、長いターミナル内でたどり着いた先がお目当てのフードコートだった。目に入ったHamburgerの文字に釣られて、バーガー屋に決定。そこには面倒臭そうにしている、店員のお姉さんが居た。恐る恐る注文した。「あのーCanyon Burger下さい」「15分、20分かかるわよー、良い?」「時間はたっぷりあるから構わない」5分で出てきた。絶対面倒くさいだけだろうと突っ込みたかった。

酒を頼む場所はまた違って、バーみたいな場所がすぐ近くにあったので、とりあえずビールを全員分頼んだ。今度の店員は凄くフレンドリーで気さくだったが、パスポートを見せる前は僕らを疑っていた。みんな未成年に見えてたらしく、どうやら東アジアの人はみんなそう見えるらしい。さて、ビールもバーガーも揃って、頂きます。

気になるバーガーの味は、うまい。やっぱりうまい。スモーキーなタレと肉圧なパティの相性が抜群だった。そして、ミディアムレアを頼んで正解だった。肉汁が溢れ落ちながらも、バンズと野菜に染み込んで行く。もう最高。ビールもIPAっぽい感じの濃ゆいビールだった。これもまた美味い。自分は真っ赤に酔ってしまった。食べ終わって楽しくなったので空港内で探索してたら、あっという間に5時間は過ぎた。テキサスに向かって飛行機に乗って、ほろ酔いの自分は速攻で寝た。

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ついに到着。カルチャー入り混じる<SXSW>に繰り出そう

飛行機の着陸と共に、ハッ!! と起きて気づいたら外は真っ暗だった。夜中の12時は過ぎてた気がする。荷物を取りに、ラゲッジポイントで待機。10分もすると、少しずつ見えてきた。預けていたギターとベースに丁寧に巻きついてたプチプチはボロボロにハゲてたし、ドラム機材を詰めたダンボールには穴が空いていて笑った。それらが僕らの手元にゆっくり来る、その風景がやっぱりシュール。

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荷物もまとまったので全部広いタクシーのトランクに入れて、オースティン市内にある、僕らがこれから4泊お世話になるホテルに向かった。意外と空港と市内が近く、高いビルも見えて来た。アメリカのフリーウェイを走りながら見る市内の景色は美しい。

事前に調べていたので分かっていたが、僕らのホテルの隣にはすぐ大きい公園と州議事堂があった。タクシー内で州議事堂の頭てっぺんが見えたから、もう近い。着いたホテルは、見た目はホテルというよりモーテルのイメージに近い。黄色を基調とした壁に面して、客室のドアが外からほとんど見えるスタイルだった。プールもあった。テキサスというより、西海岸スタイルで最高。荷物を部屋に押し入れたら今度は町に繰り出して乾杯だ。

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12時は超えてたから、流石にホテル周りはシーンとしていた。聞くとダウンタウンの<SXSW>のパーティは2時まではあるらしい。動画にしか見たことない<SXSW>の夜部門が楽しみだ。

300メートルぐらい緩やかな坂を下ると、歓声とビートが徐々に聴こえてきた。あっ来たねーこれ。歩行者天国に着くと、そこは見た事が無いほどの人でごった返していた。羅列する店の中にはそこらで多ジャンルのバンドがライブしていたし、DJもガンガンあげてて、MCはフロウしていた。カルチャーというカルチャーがごちゃごちゃに混ざってて、パンクス、ヒッピー、ヒップスター、ラッパー、カウボーイ、カレッジアート系と、全部普段は交わる事は無い全てがこの場所に集約して、絶妙なハーモニーでこの空間を織り成してるのだ。これが<SXSW>。衝撃的。

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僕も堂々と歩いた。みんなもそうであるように、僕もこの一部になった。通りすがりも、立ち止まってる人も、休憩して座ってる人もみんな、日本で見る顔と違う。生き生きとしていて、自然体。カッコつけてるようで、カッコつけてない。矛盾してるようでしていない。奇跡的な空間。僕は今そこに立っている。

いかつい2人のガードマンが立ってるバーがあり、見回した結果ここが一番ゆっくり話せそうだったので、入る事にした。そこでもやっぱりライブは行われていた。アロハシャツ着ながらプレイに没頭して、汗を流しながら本場のガレージロックを演奏していた。フォーピースのバンドで、全員男の子。恐らく歳は同じぐらい。バンド名を忘れたのをすごく後悔してるけど、カッコ良かった。

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同行していたみんなでビール片手に、乾杯。飛行機の話だったり、明日のライブが楽しみだったりと、色々と話が盛り上がった。途中でMassive君が外国人と話してて、「どこから来たの?」「ジャパンだよー」「ワーオ! クールだね! 俺らはドイツからだよー!」。彼らもどうやら演者だったらしくて、話を聞いていてなるほどと思った。

<SXSW>は世界中の人々の誰もが憧れて目指している、音楽業界の登竜門的な位置付けなのかもしれないと思った。言われてみれば、マイケル・ファースベンダーとドーナル・グリーソンが主演出ていた『フランク』という映画の中でも、彼らのバンドがYouTubeで有名になり、次のステップで<SXSW>に行くシーンがあった。自分も明日やっとステージに立つと思うと嬉しい。

みんなで店を出たのが、2時ちょっと前。なんだかストリートの様子がおかしい。みんなどんどんそれぞれの店を出て帰っていくのだ。2次会の場所を見つける為に色々と回ったが、一向に空いてる店が無かった。仕方ないから、コンビニで酒を買ってホテルで飲もうしたが、店員さんの答えは「NO」だった。幾らIDを見せても答えは同じだった。詳しい事情を聞いたところ、テキサスは基本的に2時以降がお酒の販売はできないみたいだ。仕方なくこの日は大人しくホテルに戻る事にした。疲れたので、みんな早く寝たと思う。自分もすぐに寝た。

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