フランスからその機運を先駆けた“ディスコ・ジーザス”、ブレイクボット

そうして世界的に巻き起こったディスコ再評価をフランスから誰よりも早く先駆けていたのが、ブレイクボットことティボー・ベルラン。長髪に口ひげを生やした細身のシルエットがイエス・キリストに似ていることから“ディスコ・ジーザス”とも呼ばれる彼は、ヒップホップに強く影響を受けるかたわら、ナイル・ロジャースが率いるシックを聴いてディスコにも開眼。ジャスティスやセバスチャン、アフィーらを擁する仏エド・バンガーと09年に契約すると、デビュー曲“ベイビー・アイム・ユアーズ”は後にブルーノ・マーズの“トレジャー”の元ネタではないかと話題になるほどの新たなディスコ・クラシックに。

Merci Paris ! Vous nous avez rendus heureux hier soir. #StillWaters

BREAKBOTさん(@breakbot)が投稿した写真 –

Justice – D.A.N.C.E.

Uffie – Pop The Glock

Breakbot – Baby I’m Yours feat. Irfane

彼の最大の個性は、当時のエド・バンガーのイメージだった仏ヒップホップ~エレクトロを基調にしたストリート感覚にディスコ・フレイヴァーを加え、レーベルに多様性をもたらしたこと。以降もデビュー・アルバム『バイ・ユア・サイド』やジャスティス、エール、MGMT、メトロノミー、ユクセクなどのリミックス曲で、独自のエレクトロ・ディスコを追究。その背後にはホランド=ドジャー=ホランドのラモン・ドジャーのプロデュース曲やフレンチ・ディスコの始祖セローン、果ては山下達郎にまで広がるディスコ/ソウルへの愛が溢れていて、ブレイクボット&イルフェイン名義のミックステープ『Bedtime Stories』(13年)には、まさにそんな彼のお気に入りのディスコ・チューンがずらり。

Breakbot – One Out Of Two feat. Irfane

Future Flight – Dues(81年)

Zingara – I Surrender (81年)

Robin Beck — Sweet Talk(79年)

15年にはイタリアのディスコ・レジェンド、ジョルジオ・モロダーがダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』に参加したことで再び時の人となり、30年振りの新作を発表。同年にパリ北駅の4000平方メートルもあるホームがディスコ・クラブに様変わりするなど、フランスでもディスコ再評価はより規模を拡大していったのでした。

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