先日公開されたカニエ・ウェストの新曲“Wolves ft. Sia & Vic Mensa”にプロデューサーとしてカシミア・キャットやシンジン・ホークが参加したり、ロンドンのレーベル〈PC Music〉が世界最大級のインディ見本市<SXSW>でのショウケース・ライヴの予定を発表したりと、15年も世界中で活躍著しいDTM(デスクトップ・ミュージック)系トラックメイカーたち。それもそのはず、全世界での世帯ごとのPC普及率が78%もある現代において、PCがあれば「バンド・メンバーを集めなくても」「誰でも開始可能」なDTMは、今音楽を始めるもっとも身近な方法のひとつ。そんな間口の広さも追い風にして、シーンにはマス/コアを問わず才能溢れるアーティストが登場。特にここ数年の音楽シーンでは、彼らが続々と、ポップ・ミュージックの中心地へと乗り出しつつあるというわけです。
Kanye West – “Wolves”(feat. Sia & Vic Mensa)
そしてここ日本でも、’14年に神戸のtofubeatsがメジャーに移籍して『First Album』をリリースし、’15年に大阪のSeihoとAvec Avecが、Sugar’s Campaignとしてメジャー・デビュー作『FRIENDS』を発表。tofubeatsは2月にリリースされたばかりのSMAPのシングル“華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ”にもリミキサーとして参加するなど、新世代のトラックメイカーたちの活躍は、より大きな舞台へ。そしてもちろん、彼らだけではなく、現在の日本には今後の活躍が楽しみなアーティストが続々台頭。それぞれがそれぞれの方法でポップ・ミュージックの中心地へと切り込んでいくその様子を見ていると、かつてくるりやSUPERCAR、ナンバーガール、椎名林檎らが登場した97〜8年以来の、日本の音楽シーンにとっての重要な転換期とも言いたくなってしまう。そこで今回は、その中でもQetic的に注目のアーティストをセレクト。きっとtofubeatsやSugar’s Campaignのように今後より活躍の幅を広げてくれるはずの、注目の5組をご紹介しましょう!
■Oii
まず最初に紹介したいのが、横浜在住の中生航太(Cota Nacao)が11年に始めたプロジェクト、Oii(オー・アイ・アイ)。「ひとりSUPERCAR、10年代のCornelius」とも言われる彼は、エレクトロニカ~生音を使ったアンビエント的な要素を持ちながらも,歌モノまでこなしてポップ方向にもアプローチ。そのサウンドは後期のSUPERCAR、もしくは“ナカコー”こと中村弘二のソロ・プロジェクト、iLLなどに近い。とはいえ、映画音楽の楽曲提供や、<RO69JACK2014>優勝アーティスト、deronderonderonのサウンドディレクション、レコーディング・ミキシングエンジニアとしても活動してきた彼の音楽は、何よりも記憶の欠片をそっと紡いでいくような視覚的/映像的なサウンドスケープを使った、豊かなストーリー性を感じさせるもの。’15年は3月11日に待望のフル・アルバム『Sukima Sunlight』をリリース予定!
Oii – “Puddle Talking with You”Music Video
Oii、フルアルバム『Sukima Sunlight』を全曲解説