学生1 私はヒップホップが好きでクラブにも良く行くんですが、ベルリンのクラブにはどんな人が集まるんですか? そこから生まれた独自のファッションとかってあるんですか?

宮沢 ベルリンのクラブは、特にテクノ箱に関しては全身黒のファッションがとても多いです。それは90年代から変わっていなくて、ミニマルモードなスタイルを正装としているように感じますね。でもベルリンは、毎週末世界各地からクラブへ遊びに来ている人たちが沢山いるので、人種も国も本当にバラバラです。もともと外国人が多い街ですから、実際に話してみないとツーリストなのかベルリナーなのかも分からないです。普段はどんなところに遊びに行ってますか?

学生1 六本木とか文化の生徒も多いですけど、渋谷のTRUMP ROOMとかに行っています。でも、最近すごい疑問に思うことがあって、DJはSNSで有名なファッションアイコン的なコがやるんですけど、ラップトップでただ曲をかけているだけなんです。それなら誰でも出来ちゃうじゃないですか。

【スペシャル対談!!】文化服装学院でベルリン、東京、メディアについて語る trump-room

渋谷TRUMP ROOM

宮沢 えー! 今ってそんな感じなんですか??

学生1 はい。例えば、Instagram上で“私、今日ここでDJやりまーす!”って告知して、その画面を見せるとディスカウントになるというシステムなんですけど、クラブ側もTwitterの画面見せてくれたらシャンパン一杯無料とか、SNSで割引が当たり前で、情報も全部そこから流れてくるんです。今日はこの曲を流して欲しいとかこの曲かけるよとか、事前にSNS上で会話して、情報が流れるようになってて、もうDJじゃなくて、行く人が中心になってますね。

宮沢 すごい世界ですね(笑)。全然知らなかった!! 長谷部さんはご存知でしたか?

長谷部 もうここ5、6年そういうシーンが続いてるんすよ、実は。いわゆる僕たちが有名DJだと思ってる海外アーティストたちより、身内で有名なインスタグラマーとかモデルがやるパーティーの方が集客力があるし、盛り上がっているのが現状ですよね。おっさんからしたらおもしろい現象が起きてるなって思いますけどね(笑)。

宮沢 今の若者はクラブに行かないって言われてますけど、そういった新しいシーンがあるんですね。

長谷部 でも、それも一部ですよね。東京も90年代から2000年代初めぐらいが一番クラブが盛り上がっていて、カルチャーを生んでいた時代だと思いますが、当時の学生だったら誰でも一度はクラブへ行ったことがあったと思うんです。でも今は逆に行ったことある人が10%ぐらいになっちゃってるんじゃないですか?

宮沢 (学生に向かって)クラブへ行ったことある人?

(半数近くが手を上げる。)

長谷部 やっぱり文化のコたちはちょっと普通の感覚とは違うなー(笑)。

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学生2 私はニューカレドニアで育って、フランスの文化を見てきているんですが、日本ってすごくトレンドに流される国だと思うんです。ファッションに関して言えば、フランスではトレンドは取り入れるけど、ワンアイテムぐらいで、自分のスタイルは崩さないというのが普通なんです。その辺ベルリンはどうですか?

宮沢 ベルリンだけでなく、欧米の人たちは自分に自信を持っている人が多いからファッションに流されることはないですよね。それぞれ個をきちんと持っているから、例えばファストファッションを着ていても、ヴィンテージを着ていても、そこにオリジナリティーはあるんです。トレンドももちろんあるから似たような格好の人も多いけど、さっき上げたクラブファッションに多い全身黒のコーデであっても、自分だけのポイントを持っていますよね。髪型とかメイクとかアクセサリーとかで主張しています。ファッションだけでなく、踊り方にもそういったのは現れてると思います。

長谷部 東京ってすごい特殊ですよね。古い街なのに街自体がどんどん新しいものを作っていってしまう。古いものをどんどん否定していって、新しいものを取り入れてるじゃないですか。戦後ずっとそうしてきて今みたいな街になっていますよね。でも、不景気が長年続いて、次々と新しいものへと言う考えが少しずつ変わって来ていると感じます。

景気が悪い時期が長いだけに、定番って何? スタンダードって何? というのが見直されてきていますよね。

メディアでもそんな話を取り上げているのをよく目にするようになりましたし。

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全身黒で統一されたクラブファッション

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