モチーフやアイデアを誰が持ってきたかが関係なく思えるぐらい混ぜていくのがバンドの醍醐味

ーーで、その映画『ブラフマン』の主題歌でもあった今回のシングル“其限~sorekiri~”ですが。映画の中で、そのメイキングも入っていたのですが。失礼な話、私はずっとBRAHMANって、TOSHI-LOWさんの持ってきたビジョンを基に楽曲を作っているのだと思ってました。ところが映画で、割とゼロベースからメンバーがベーシックのサウンドやアレンジを作っていき、そこにTOSHI-LOWさんがメロディや歌詞を乗せていくシーンが出てきたので、正直驚きました。

うん。実際、あんな感じが多いよ。例え自分が持っていったとしても、作っていったり、煮詰めていくうちにどんどん変わっていくし。各人、自分のアイデアや方向性がいいと思って挑むんで、削り直していくことで、作曲者が誰かとか、アイデアやモチーフは誰かとか、どうでも良くなってきて。逆に、そうなるまで混ぜていくことがバンドとしての醍醐味だと思う。

▼BRAHMAN – “其限~sorekiri” MV

ーーその中で、そこに至るまでの迷いや葛藤を経て、研ぎ澄まされて、珠玉の結晶のような1曲が作られていたことに改めて気づきました。

もちろん一人の考えをオーケストラの指揮者のように広めていく人もいるだろうけど、それはソロでやればいいことで。人が混じり合うからのバンド、そのバンドの楽曲、ただそれだけ。

ーーで、その伝え方にも驚きました。今回は今までになく牧歌的じゃないですか。ちょっとカントリーライクで、シャッフルも入ってる。

(ドラムのRONZI)本人はシャッフルしてないって言ってるけど(笑)。それらのサウンドを紐解いていく中からあのメロディが浮かんできて、歌詞とかをつけてああなった。今回もそうだけど、メロディや言葉は、まずは当たりがいいところから考えていくんです。基本、ボーカルの強弱や表現に関しては、ドラムに合わせているところもあるんで。心で正直に聴いて。自分のやりたいこと、伝えたいことばかりが先行すると、メロディや雰囲気を無視して、つい言葉を詰め込み勝ちになっちゃいますから。それは避けたくて。

結局、昔の自分は納得してはくれなかったけど、向き合い、伝えることで、歌うことへの後ろめたさがなくなった

孤高のBRAHMAN、その20年をTOSHI-LOWが語る interview150629_brahman05

ーー映画を観る前は、ライヴバンドBRAHMAN、ツアーバンドBRAHMANと、各地のライヴの一夜一会を歌っている印象を持ちましたが、観た後、印象が変わりました。それだけでなく、BRAHMANの結成からこれからの来し方行く末、脱退していったオリジナルメンバーへの想いも含め、この楽曲に凝縮されていたんだなって。いわゆるレクイエム的とでも言うか……。

レクイエムと言ったら、俺たちの歌は全部レクイエムだから。内容は分からなかったけど、今回は映画の主題歌だったんで、その内容とかけ離れたものにはしたくなかった。だけど基本、内容が決まってないからテーマも漠然としていて。

ーーそのシーンは映画でも出てきました(笑)。

あれじゃ何のヒントもアイデアも浮かばない(笑)。

ーーだけど、そこでよくある、“傍らにいつでもいるから”や“これからも一緒にいるから”と決して歌わないところがBRAHMANらしい。

それをやっちゃったら、巷に溢れてる嘘の頑張ろうソングと同じだから。みんなで手を繋ぎ、一つになって頑張ろう!! って(笑)。あんな嘘な歌には絶対にしたくなかった。

ーー嘘(笑)。

嘘ですよ。あんな歌たちは。震災が起こった時、その前までそんなことを歌っていた連中、みんな逃げちゃったから(笑)。あれー、あんなこと歌っていたのに……って(笑)。だけど、そうじゃない、そうなりたくないから、パンクとか拒絶の歌の方が昔から好きだったんだなって。そっちの方がよっぽど嘘ついてないし、逆に世の中に中指立ててるやつの方が本当のこと歌ってますからね。自分にとっては、そっちの、“世の中なんてクソだよ”とハッキリ言うヤツの方が信頼できる。だって、そっちの方がよっぽど本当じゃん。

ーーこの歌の面白いところは、私はこの歌からレクイエムを想起しましたが、たぶん聴く方によって捉え方や響き方、感受がそれぞれ違ってくるところだと思うんです。

この“其限~sorekiri~”を作っている時に、自分の中で凄く考えていたのが、過去との対話だったんです。過去の自分にどう落とし前をつけていくか、で。今、これを俺は歌うと。で、こんな歌、歌いたくねぇと思っている時代の自分が居るとして、そいつをどう説得してこの歌を歌ってもらうか。「お前、この歌、歌ってくれない?」って。歌わない自分を説得に行く。やはり納得して歌ってもらいたいですから。そんな時に、今の自分はどんな言葉を使って、その時の頑固な自分を説得するのか? 分かってもらえるのか? それを各年代ずっとやるわけですよ。20年間の自分に今の自分がこの歌を歌うことを説明するのに、どういう姿勢で、どういた顔をして、どういう目で伝えれば、そいつらに分かって、納得してもらうのか? そんなことをずっと考えてました。

ーーで、各年代の自分をしっかり納得させてから、この歌を歌ったと。

いや、結局は納得してないんですよ。説得させ切れなかった。言わば、そいつらも頑なに変わらなくて。だけど一つ変わったのは、そいつらに後ろめたくなくなったところで。

ーー例え歌っても、その時の自分たちに決して恥じない。

そう。今の自分はこうやってる。お前の思っているものと正反対の自分になってるかもしれないけど、何にも逃げる必要もないし、後ろめたくない。堂々とこの歌を歌うから。それが強かったですね。

ーー7月1日(水)のこのシングルを皮切りに、7月4日(土)からは映画も公開され、8月には、この20年を集約したかのような2枚組のベストアルバムもリリースされます。凄くアニバーサリー的な20周年になりそうですね。

他の年が特別じゃなかったのかと言ったら、そんなことはないんだけど。1日1日、1年1年、俺にとってはずっと特別だったし。と改めて思った上で、甘んじて……。

ーー甘んじて!?

20周年は記念イヤーとして頑張っていきます!!

ーー潔いい!!

(笑)。いや、だけど、節目って大事っすよ。どこかでキチンと区切りをつけたが故に、また21年目からも特別な1日、特別な1年を繰り返せる。祝われる時は、ちゃんと真剣に祝われたいし。だけど、決してそれは、“みなさん、さぁ喜んで下さい!!”ではなくて、むしろ逆。俺たちをみんなで喜ばせて下さいって(笑)。20周年ぐらい、俺たちをみんなで盛大に祝ってくれ!! って(笑)

孤高のBRAHMAN、その20年をTOSHI-LOWが語る interview150629_brahman04

EVENT INFORMATION

尽未来際 ~開闢~

2015.08.09(日)下北沢 SHELTER
2015.08.11(火)下北沢 Club 251
2015.08.12(水)新宿 ANTIKNOCK

尽未来際 ~畏友~

2015.09.29(火)名古屋 DIAMOND HALL
2015.10.01(木)大阪 Namba HATCH
2015.10.04(日)福岡 DRUM LOGOS
2015.10.06(火)大阪 BIG CAT
2015.10.08(木)名古屋 Nagoya CLUB QUATTRO
2015.10.21(水)仙台 Sendai Rensa
2015.10.23(金)新潟 LOTS
2015.10.30(金)札幌 Sapporo FACTORY HALL

尽未来際 ~尽未来祭~

2015.11.14(土)幕張メッセ国際展示場
2015.11.15(日)幕張メッセ国際展示場

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RELEASE INFORMATION

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photo by Takuya Nagamine