アーティストとオーディエンスとジャーナリストのトライアングルが
きちんと生まれるのであれば、それでいいと思うんですよ

——そんなタナソウさんは『the sign magazine』として、エンターテインメントをどんなスタイルで発信していきたいですか?

わかんない(笑)。ただ、エンターテインメントの魅力的なところは、ファッキン・モンキー・ビジネスが介在するグロテスクなところだよね。『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいにさ(笑)。でも、そのこと自体を頭ごなしに否定するのではなく、それを含めてもなお、すばらしいモノだって再定義できるか否か。それがシリアス・アートではないポップ・アートの素晴らしさだと思ってる。常に誰かを不必要に傷つけて、何かしら搾取の構造があって、それでも光り輝くという。汚濁の中に理想と夢がある。

——その考え方は、とてもわかりやすいですね。

よく言われるでしょ。紙の音楽雑誌ってなかなか言いたいことを書けないって。なぜならレコード会社から広告をもらっているからって。でも本当はそんなことないんですよ。俺は『snoozer』やっていたときもレコード会社にあるときは土下座をし、あるときは腰を据えて相談して、書きたいことを書いた。この前Twitterで「『the sign mag』は広告もらってないのに『snoozer』のときと書いてること変わらないじゃん!」って言ってた奴がいるんだけど、変わるわけがないんだよね。いつだって書きたいことを書いてきたんだから。ときには広告という形でお金ももらってね。だって、俺がやってるのはエンターテイメントだから。ちょっと別な話すると、紙メディアってパイの食い合いじゃない? あれ、すごく馬鹿らしい。そうじゃなくて、WEBのように互いにリンクを貼って、読者が飛び交ってくれた方が絶対に全体のためになる。紙メディアだと、どうしても競合しちゃうんですね。レーベルやアーティストが、メディアを天秤にかけたりもするしさ(苦笑)。でも、そういうことはもうつまらない。どれだけ全体として、情報のサーキットとして、価値のあるものが生まれるかどうか。17歳年下のボスとは、「とにかく気前よくいこうぜ」って話をいつもしてます。すべてのアーティスト、すべてのWEB、すべてのレーベルに少しでもためになるんだったら、意味あるものなら、ばんばんポストあげて、リンク貼ろうぜって。だからこそ、誰もがWEBを活用して欲しい。面白ければ、いくらでもリンク貼るもん。で、その代わり、お金を持っているところにはお金くださいって、俺が土下座しに行くからって言っています。結果、アーティストとオーディエンスとジャーナリストのトライアングルがきちんと生まれるのであれば、それでいいと思うんですよ。俺の役割はそれを作ること。

text & interview by fukuryu(fukuryu76@gmail.com)
photo by Taisuke Yamada

★まだまだ“タナソウ”シリーズは終わりません! 
番外編として「タナソウお悩み相談室」を後日開設予定。
質問を募り、若者の普遍的なお悩みをタナソウさんにぶつけちゃいましたー!お楽しみに♪