Interview後編:田中宗一郎(『the sign magazine』)

新しくはないけど古くはないもの。
そういうものが存在すると思った。

——今の日本の音楽シーンについてはどうお考えですか?

ネット界隈のビートメイカー/プロデューサーは勿論のこと、〈カクバリズム〉とか、〈月刊ウォンブ〉周辺を筆頭に、インディーロックはいろいろと新しいものが生まれているんだけど、メインストリームのバンドの大半が本当に退屈だと思う。理由が何かっていったら、やっぱり古いシステムのままの資本が介在してるから。利権や力はあっても、センスの古いスタッフとか、プロデューサーとか、エンジニアの問題が絡んでるんじゃないかな。でも、そこから離れて、音楽をやってる、やらざるをえないバンドたちの作る音楽は本当に面白くなっている。勿論、活動を続けていくのはそんなに簡単じゃないとは思うけど。

——音楽を発表したり、プロモーションするシステム、流通がネットの進化で解放されているワケですもんね。いまメジャーシーンでいえば、権利問題もあってフットワークが重くなって身動きが取れなくなってしまっていますよね。そんななか、日本独自の方法論で戦っているロックバンド、サカナクション、RADWIMPS、ONE OK ROCKなどをどう思いますか?

その中ではワンオク(ONE OK ROCK)が一番いいと思うな。それは単純に、今挙げてもらった他のバンドの音楽的な引用が90年代で止まっているように思えるから。ワンオクはゼロ年代以降のモダン・ロックのアイデアを取り込んでる。まあ、積極的に聴きたいとは思わないけど。あと、最近思うことなんだけど、これまでって“新しい”という概念と“古い”という概念しかなかったじゃない? でもこの前<electraglide 2013>で、チック・チック・チックのライブを見て、ポストモダンの現在においてはもう1つの概念が存在するんじゃないかって妄想が頭をもだげたのね(笑)。新しくはないけど古くはないもの。そういうものがいわゆる以前までのエヴァーグリーンとかという言葉ではなくて存在するんじゃないか、って。チックがホント少しも新しくなかったんだよ(笑)。もしかしたら、あの日出演していたアクトの中だと、一番オーセンティックだったかもしれない。でも、けして古いわけじゃない。それって、例えば、20年前にザ・ラーズみたいな温故知新的な音を聴いても、そこまでは感じなかったような気もするんだよね。

ONE OK ROCK “The Beginning”

——それは興味深い視点ですね。

でも、最近自分で喋っていても思うんだけど、“新しい”という言葉をすごくネガティブな意味合いで使っていることが多くて。今までにはなかったけれども、取り立てて大した成果を生み出さないだろうものを少し茶化すような意味合いで「新しいなー」って言ってる。勿論、以前あったものを組み合わせて、まったく新しいことを生み出す表現は今でもエキサイティングなんだけどーーOPN(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)みたいにさ。でも、今は取り立てて新しくはないんだけど、決して古くないものが存在するし。ジェイク・バグなんて、まさにそうだよね。それって10年前よりも20年前よりも価値があるような気がするんだよね。うん、そう考えると、やっぱり日本のメインストリームのバンドは、新しいの多いね(笑)。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー “Replica”

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