藤原さくらやさかいゆう、SKY-HIら数多くのアーティストのプロデュースを手掛け、自身もバンドOvallのメンバーとして活躍するmabanuaが、ソロ名義では通算3枚目となるアルバム『Blurred』を2018年8月28日(水)にリリースする。

mabanua – Blurred [Official Music Video]

CharaやAchicoをフィーチャーしつつ、あらゆる楽器を全て1人で演奏し、自身初となる日本語詞のボーカルや、ミックスダウンまで自ら手掛けた本作は、太くタイトなビートと浮遊感たっぷりのシンセが融合する、ソウルフルかつサイケデリックな音世界。日本人の琴線に触れる、懐かしくも哀愁漂うメロディラインも印象的だ。

今回は、そんなmabanuaと。昨年8月に通算7枚目のアルバム『NO MORE MUSIC』をリリースしたOKAMOTO’Sのベーシストであるハマ・オカモトとの対談を行なった。

先日、森山直太朗のレコーディングで初対面したという2人。日本の音楽シーンを牽引するドラマー、ベーシストとして普段どのようなことを考えているのか。「リズム隊」の魅力とはどこにあるのか、たっぷりと語り合ってもらった。

Interview:mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)

日本の音楽シーンを牽引するmabanua(Ovall)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)が語る「リズム隊」の魅力 music180828_mabanua_hamaokamoto_02-1200x800
L→R:ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、mabanua(Ovall)

──お二人は先日、森山直太朗さんのレコーディングで初対面したと聞きました。それまではどんな印象をお互いに持っていましたか?

ハマ・オカモト(以下、ハマ) 僕は、自分がバンド以外のところでも演奏仕事をするようになってから、mabanuaさんのお仕事をより意識するようになりましたね。色々な人から、「まだ一緒に仕事したことがないなんて意外!」とよく言われていましたし、いつかご一緒する日は来るだろうなと勝手に思っていました。そうそう、今朝もmabanuaさんがプロデュースした藤原さくらさんの新作『green』を聴いてきたのですが、これ本当に凄い作品ですね。

藤原さくら-『green』

mabanua あ、本当ですか? ありがとうございます。

ハマ 藤原さんのようなアコースティックな作品に、打ち込みを混ぜるその塩梅や、1音1音の磨かれ方が尋常じゃないというか。しかも、全然小難しい感じがしなくて。楽器も藤原さんのアコギ意外は、ほとんどmabanuaさんが演奏しているんですか?

mabanua そうですね、ゲスト・ミュージシャンはターンテーブルとトランペットくらいで。

ハマ 本当にいい作品だと思います。サイズ感も含めてとても気に入っています。

mabanua 嬉しいな。僕もハマくんのことは、OKAMOTO’Sが出てきた時から注目していました。ていうか、メディアから友人からみんな騒いでましたよね、「すげえバンドが出てきた」って。ベースのスキルと音楽的知識に、みんなが圧倒された。自分たちの見せ方も心得ているし、羨ましいなって単純に思いましたよ(笑)。

ハマ ありがとうございます。

mabanua ベースのアプローチもすごく好きです。ベーシストとドラマーって、バンドの中で重心を支える存在っていうイメージがあるじゃないですか。でもハマくんのプレイは、ベースの役割を充分果たした上で、ちゃんと主張もしてる。「あ、これハマくんの音だね」って分かるのは凄いことだなと。

──実際にスタジオで一緒に音を合わせてみてどう思いました?

ハマ 1曲だけでしたし、あっという間に終わってしまいました。3、4テイクくらいだったかな。面白い楽曲でしたよね?

mabanua そうそう、不思議な歌詞の世界で。

ハマ 曲の途中からmabanuaさんのドラムが入ってくるのですが、その時のフィルインが毎回変わるんです。仮ミックスしてもらったデータを改めて聴いたら、OKテイクになったフィルがとにかくヤバい(笑)! 今まで聴いたことのないフレーズでした。

mabanua どんなんだったか忘れちゃった(笑)。ハマくんはね、ベースプレイに安定感があるんですよ。僕のドラミングって、ベースプレイに意外と影響されやすくて。ちょっとしたミュートの音とか、ニュアンスをすごく細かく聴いているので、相手によっては「これはちょっと、頑張って合わせないとな」って思うベーシストもいるんです。あるいは、何にも考えずにパッと合わせられる人もいて、そういうのは最初の8小節くらいで分かるんですね。ハマくんの場合はもう、最初から気持ち良いくらいストレスがなくて。

ハマ 光栄です!

mabanua ただただ一緒に叩いてて気持ちいいだけなんですよ。「どこが?」って言われると、マニアックな話になっちゃうと思うんですけど(笑)。

ハマ 僕も、例えば自分のプレイの中で音数が多いところなんかは、意識しないと1人で突っ走ってしまったり、少し不安になったりすることもありますが、mabanuaさんとはそういうストレスが全くありませんでした。とにかくテイクを重ねるごとに、どんどんドラミングがカッコ良くなっていくので、「どうしよう、俺もなんかやらないと!」という気持ちになっていったのは覚えています(笑)。

日本の音楽シーンを牽引するmabanua(Ovall)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)が語る「リズム隊」の魅力 music180828_mabanua_hamaokamoto_03-1200x800

──ところで、お二人はどんなキッカケで楽器を始めたのですか?

mabanua 僕は最初、鍵盤だったんですよ。親にクラシックピアノを習わされるパターン。小学校低学年くらいまでやったかな。で、中学生くらいからギターをやり始めて。でも学校の中で、ギターとボーカルって人口が多いから、主張の強いやつだけが残る。俺みたいな人間は、段々後ろに追いやられていくんですよ(笑)。ドラムもなまじっか叩けたもんだから、気がついたらドラマー固定になっちゃって。

ハマ なるほど。ギターの座も明け渡してしまったんですか?

mabanua ギターの場合、ソロとかメチャメチャ上手い奴いるじゃないですか。スケールで攻めてくみたいなのは、俺も練習したけどどうも上手くならなくて。どちらかというと、バッキングの方が好きだったんですよ。パワーコードでガシガシ弾くような(笑)。その辺から、自分は裏方が向いてると気づいたんですよね。

ハマ 当時はどんな音楽を聴いてたんですか?

mabanua 聴いてたのはビートルズやレッド・ツェッペリン。でも、そんなの学祭とかでやるやつ他にいないじゃないですか、渋すぎて。だから、バンドでカバーしてたのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやHi-STANDARD。主にミクスチャーやハードコア、パンク系のバンドでした。ハマくんは?

ハマ 中学に軽音楽部があって、当時から友だちだった(オカモト)コウキ(G)と(オカモト)ショウ(Vo)が、僕より先に入部してたんです。その2人がどんどん音楽を探求していくようになって、僕の知らない音楽の話や、用語が会話の中に飛び交うようになってきて。それについていくために僕も軽音に入りました。ちなみに、当時はエミネムなどが流行っていて、音楽をやりたい奴はみんなヒップホップへいきました。僕らみたいに楽器を演奏しているやつらは「オタク」扱いというか。

mabanua そうだったんだ。なぜベースを選んだの?

ハマ 当時ショウはドラマーで、コウキはギターだったのでそれ以外の楽器を探すことになって。ボーカルは恥ずかしいし、鍵盤は「ロックじゃねえ」と当時は思っていて(笑)、それで消去法で選んだのがベースでした。うちの部はmabanuaさんのところと違って、ボーカリストが1人もいなかったんです。文化祭ではビートルズや(レッド・)ツェッペリン、クリームなんかをバリバリ演奏していましたが、肝心のボーカリストがいない。全てインストでした(笑)。

mabanua なにそれ! 新しい(笑)。

ハマ でも今考えると、歌なしでも聴かせる演奏にするために練習はかなりしていた気がします。その過程で楽器への執着心も芽生えたし、演奏力も鍛えられたんだと思います。今考えるとものすごく勉強になった。そこから、中学卒業のタイミングで(オカモト)レイジ(D)がバンドに入ってきて、英語が話せるショウに歌わせるようになり(笑)、それで今のOKAMOTO’Sの原型が作られました。

mabanua なるほどねえ。

mabanuaとハマ・オカモトの最近気になっている音楽とは? 

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Text by 黒田隆憲
Photo by Shintaro Nakamura