コンパクト・サイズのボディーに、シンセサイザーやリズム・マシン、サンプラーなどが内蔵され、直感的な操作感覚とリーズナブルな価格でダンス・ミュージックを演奏できる、大人気のKORG「volca(ヴォルカ)シリーズ」。

同シリーズは、アナログ・ループ・シンセ『volca keys』、アナログ・ベース・マシン『volca bass』、アナログ・リズム・マシン『volca beats』、デジタル・サンプル・シーケンサーの『volca sample』と『volca sample OK GO edition』、デジタル・FM・シンセサイザー『volca fm』、アナログ・キック・ジェネレーター『volca kick』の7種類が発売されています。

それぞれに特徴があり、複数の「volca シリーズ」を接続してシーケンサーやパラメーターをコントロールする事で、音作りを楽しんだり、多彩なサウンドやグルーヴを演奏する事ができるのです。

今回、その中でもダンス・ミュージックを作る上でとても重要かつ、サウンドの軸となる「キック」を鳴らす事に特化した、KORG『volca kick』(ヴォルカ・キック)の使用レポートをお届けしたいと思います。

KORG「MS-20」の前期型フィルターが搭載、アナログ回路特有の存在感のあるキック・サウンドが作れる

様々なダンス・ミュージックに適したキックが作れる、KORG 『volca kick』の魅力と、DAWを同期させた演奏 technojogy180124_vocalkick_02-700x468

こちらが『volca kick』です。整然とツマミやボタン類が並び、黒光りするコンパクトなボディーは無駄がなくカッコいいです。黒に対して、白い線で描かれた文字やツマミの目盛りは、どことなくKORGの往年のアナログ・シンセサイザー「MS-20」のカラーリングを連想させます。

それもそのはず、本製品は、KORG「MS-20」の前期型フィルターが搭載され、アナログ回路特有のパワフルで存在感のある音を出力でき、様々なダンス・ミュージックにマッチしたキック・サウンドが作れる、アナログ・キック・ジェネレーターなのです。

電池切れを気にせず使用したい場合は、別売りのACアダプターKORG「KA350」がおすすめ

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それでは本製品の様々な機能を見て行きたいと思います。まず左上には電源ボタンとDC 9V端子があります。電源ボタンを押してオン・オフしますが、4時間何も操作しなければ、自動的に電源がオフになる仕組みになっています。

本製品は裏側に電池ボックスがあり、付属の単三乾電池6本を使用すれば音を出す事ができます。電池切れを気にせず使用したい場合は、別売りのACアダプターKORG「KA350」を同時に購入する事をおすすめします。

その下の「DRIVE」ツマミは右に回すと歪みが強調され、パンチのあるキックに変化します。「TONE」ツマミは「DRIVE」で強調したキックの高い周波数をカットして、派手さをおさえる事ができます。

左下のディスプレイには、ツマミなどをコントロールした時の数値が赤く表示されます。

「PULSE」と「AMP」セクションで、キックのクリック感や、アタックとディケイをコントロールできる

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中央の上にあります「PULSE」セクションの透明のツマミは、キックの頭の部分に「カツ」というパルス音を混ぜてクリック感を出すために使用します。「COLOUR」ツマミを右に回すとパルス音がはっきりし、左に回すとソフトな音になります。音のキャラクターを決めたら「LEVEL」ツマミで、キックに対してどのくらいパルス音を混ぜるかを設定します。

そのとなりの「AMP」セクションでは「ATTACK」、「DECAY」の2つのツマミで、音の立ち上がりと、減衰する早さを調節します。「ATTACK」ツマミは左に回すとアタックが速く、右に回すとアタックが遅いキックになり、「DECAY」ツマミは左に回すとタイトに、右に回す程「ドゥーン」という長いキックになります。これらの透明のツマミは、操作した時に赤く光りカッコいいです。

「MS-20 RESONATOR」セクションを調節してキックの「胴鳴り」を作る

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中央の「MS-20 RESONATOR」セクションは、内蔵された「MS-20」フィルターを発振させ、キックの「胴鳴り」を作るための重要なセクションです。

「PITCH」ツマミは左に回せば低く、右に回せば高い音程になります。「BEND」ツマミはピッチに対するエンベロープ・ジェネレーターのかかり具合を設定し、右に回す程深くかかります。「TIME」ツマミはピッチの立ち下りの早さを設定するもので、「BEND」が深くかかっている程、「TIME」を上げた時に「ピュン」という動きの音になります。

例えば「PITCH」ツマミを9時位、「BEND」を12時位、「TIME」を12時位に設定すれば、「ドン」というオーソドックスなキックの音が出ます。この3つのツマミを、良い具合に調節して好みのキックの音に近づけて行くのです。

先にも書きました「DRIVE」、「TONE」機能を使えばキックのパンチ感を強調できます。本製品はキック作りに必要な機能がシンプルにまとまっているので、サンプリング音源のキックを使うよりも、パワフルな音が短時間で作れます。

余談ですが、「BEND」と「TIME」のツマミを左に回し切ると、エンベロープ・ジェネレーターが何もかかっていない音が出ます。この状態で「ステップ1~16ボタン」を鍵盤にしてベース・ラインなどの音階のあるフレーズを打ち込む事も可能です。

DAWや、他の「Volcaシリーズ」と接続、同期させて演奏できる

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「MIDI IN端子」に、他のMIDI機器や、DAWがインストールされているパソコンをMIDIケーブルで接続し、『volca kick』を外部音源として使用したり、DAWと本製品のシーケンサーを同期させて、同じテンポで演奏する事も可能です。そのとなりの「SYNC IN、SYNC OUT 端子」は、他の「Volcaシリーズ」などと付属のケーブルで接続し、両方を同期させて演奏する時に使います。

「ヘッドホン端子」には、3.5mmステレオ・ミニ・プラグを接続します。ミキサーやスピーカーにケーブルを接続する時もこちらの端子を使用します。何も接続しなければ本製品の裏側に付いている、小型のスピーカーから音が出ます。

その下の「SWING」ツマミを右に回せば、リズムがシャフルしてグルーヴ感が増し、「TEMPO」ツマミで内蔵シーケンサーのBPMを設定し、「VOLUME」ツマミでキックの音量を調節します。ですがこの3つのツマミはモーション・シーケンス機能で動きをつけたり、設定をセーブできない仕様となっています。

次は本製品とDAWを同期させた演奏を撮影しました。DAWソフトの、ネイティブ・インストゥルメンツ『MASCHINE』がインストールされたパソコンと『volca kick』をMIDIケーブルで接続し、両方のシーケンサーを同期させて演奏しましたので、お楽しみください。

KORG Volca Kick – Sync Play with DAW – Music By FALCON-106

「ステップ1~16ボタン」は、鍵盤、ステップ・ボタン、タッチ・エフェクト機能として使用できる

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手前の方にある「ステップ1~16ボタン」はツルツルした板で出来ていて、指で「チョン」と触ったり、いくつかのボタンを「サッ」と擦ると即座にランプが点灯します。触り心地とセンサーの反応がとても良いです。

これら16個のボタンは鍵盤のように弾く事もできますが、「STEP MODE」ボタンを押すと、16ステップのシーケンスを打ち込むステップ・ボタンになります。この状態でシーケンスを再生させると「ステップ1~16ボタン」の上を赤いランプが左から右へ順番に点滅します。16個のボタンの中でキックを鳴らしたい位置を指で触り、オンにしてパターンを作ります。オンにしたボタンは赤く点灯するので、どのタイミングでキックが鳴るのか一目で分かります。

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「TOUCH FX」ボタンを押した時は「ステップ1~16ボタン」が、タッチ・エフェクト機能に切り替わり、シーケンスを再生しながら16個のボタンから好きなエフェクトを選べます。

具体的にどのようなエフェクトかと言うと、オクターブ音が高くなる、サスティンが長くなる、キックが連打される、ピッチ・ベンド・タイムがランダムに動く、押したタイミングから4ステップがループ再生される効果など、様々です。この機能を使えば演奏中にアドリブでパターンに表情を付ける事ができます。

「PLAYボタン」は、押すとシーケンスの頭からスタートし、再度押せばストップします。パターンが再生されている状態のまま「RECボタン」を押せば、「ステップ1~16ボタン」を使ってキックをリアルタイムで打ち込む事ができ、再度「RECボタン」を押せば録音が解除され、再生に戻ります。多少タイミングがずれて打ち込んだとしても、自動的にクオンタイズされ、「カチッ」としたパターンが出来上がります。

同じテンポのまま予想外のグルーヴが飛び出す、アクティブ・ステップ機能を搭載

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本製品の右下に並んだ4つのボタンは色々な事ができます。まずは「ACCENT」、「ACTIVE STEP」、「MEMORY」ボタンについてご説明します。

「ACCENT」ボタンは「ACCENT」ツマミと組み合わせて使うと、パターンの中で、音を強調する時、しない時を設定できます。これが地味な変化なのですがカッコよく、キックのフレーズにメリハリがつきます。全部にかけるより、所々にかけると効果的です。

「ACTIVE STEP」ボタンは、16ステップあるパターンの、いくつかのランプを消すと、そのステップは再生されず飛ばしてシーケンスがループされます。同じテンポのまま予想外のグルーヴが飛び出すのです。これは、アクティブ・ステップ機能と言って、ノリを変化させたい時に威力を発揮します。

「MEMORY」ボタンを押しながら「ステップ1~16」ボタンを押せば16個の保存されたパターンからどれかをロードできます。この時に演奏したい範囲をいくつか選べば、そのパターンを順番に続けて再生できます。

ファンクション・ボタンと組み合わせる事で様々な機能になる

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これら3つのボタンを「FUNC」(ファンクション)ボタンと組み合わせて押すと、違う機能になります。

「FUNC」ボタン+「ACCENT」ボタンは「SLIDE」機能になり、ステップ間のスライドのオン・オフを設定できます。オンにした次のステップで音程が滑らかに、繋がったニュアンスになります。キックよりも、ベースなどにかける方が効果的で、16刻みのベース・ラインを所々スライドさせれば、ひねりの効いたカッコいいフレーズになります。

「FUNC」ボタン+「ACTIVE STEP」ボタンは「BEND REVERSE」モードになります。これは、16ステップ上で指定した箇所だけベンドが逆さまになり、「ドン」というキックの音が「ピョー」という効果音に変化します。16ステップ全てにかけてしまうと、さすがにリズムでなくなってしまいますが、ポイントを狙って入れれば、意表を突いたパターンを作る事ができます。

「FUNC」ボタン+「MEMORY」ボタンを押せば、「ステップ1~16」ボタンに16個のパターンをセーブできます。

ツマミの動きをシーケンスに記録できる、モーション・シーケンス機能

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また「FUNC」ボタン+「ステップ1~16ボタン」を押すと、ドラム・ロールやオクターブ・アップ、サスティンなどの効果を入れたり、先程設定しました「ACTIVE STEP」、「ACCENT」、「SLIDE」、「BEND REVERSE」や、シーケンス・データを削除したり、UNDOで元に戻したりできます。

その中でも一番面白いのはモーション・シーケンス機能です。録音再生しながらツマミを動かせばオートメーションのようにパラメーターの動きをシーケンスに記録できます。この機能を使えばフレーズの前半は「ドン」という短いキックから始まり、後半は「ドゥーン」とディケイを長くする事も可能です。クリアー・ボタンで記録したモーション・シーケンスを消す事もできるので、納得行くまで何度でもやり直しできます。

必要なツマミだけがシンプルにまとまり、迷わずにパワフルなキックが作れる

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KORG『volca kick』の使用レポート、いかがでしたでしょうか。本製品はキックを作るのに必要なツマミだけがシンプルにまとまり、迷わず音作りができる所がとても良く、「FUNC」ボタンと他のボタンを同時に押すと違う用途になるなど、限られたスペースの中に様々な機能が盛り込れています。電源を入れると「サー」というノイズがうっすらと鳴り、音がきれいすぎないところもカッコいいです。「DRIVE」、「TONE」のツマミでキックを歪ませたり、フィルターで音を削る事ができるなど、外部のエフェクターを使う事なく、ある程度音色を作れるのも嬉しいポイントです。コンパクトに作られているからノート・パソコンの横に置いても場所を取らず、シーケンスを再生しながらツマミを調節すれば、制作している曲に適したパワフルなキックを、スピーディーに作る事ができるのがとても良かったです。KORG『volca kick』を、制作やライブに取り入れてみてはいかがでしょう。

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